文系はコミュ力がある、理系は論理的……などと耳にしたことはありませんか? そもそも文系・理系とは、自分が学ぶ方向性を決めるための選択肢に過ぎず、どちらを選んでもその人自身の性格や特性とは何ら関係ないはず。けれど、学んできた分野によって発想はもちろん、 物事の見え方が異なるなど、文系・理系における文化の違いを実感してきた方も多いことでしょう。

今回ご紹介する『お前の寝言がわからない』は、まさにそんな文系と理系の違いをコミカルに描いた作品です。文系女子と理系男子がある日突然、一つ屋根の下で暮らすことになったら……?

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『お前の寝言がわからない』(ヤングキングコミックス)


幼馴染の文系女子と理系男子がルームシェア!?


引っ越し先で20年ぶりの再会を果たした、幼馴染の文香と真理雄。偶然の出会いに盛り上がる2人ですが、なんと入居予定の部屋がガス爆発で大破。その結果、復旧するまで一つ屋根の下でルームシェアをすることに。

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突然の同居に戸惑いながらも「小学生の頃よく遊んだ相手だし」「私は、俺はいつも周囲と上手にやれているし」と高を括る2人。けれど、この日を境に予想の斜め上をいく日常が幕を開けるのです。

まずは、そんな2人の自己紹介から。文香は文系出身で現在は出版社勤務のOL。対する真理雄は理系出身で製薬会社に勤務しています。

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部屋分けの時点で既に不穏な空気が漂う2人ですが、この理系・文系それぞれの思考回路の違いによって、ここから同居生活はさらに混沌を極めていきます。

 

「一緒に引越し蕎麦を食べない?」と言われたら


例えば、文香が「一緒に引越し蕎麦を食べない?」と言えば、「そもそも引越し蕎麦が何なのか?」と気になって仕方がない真理雄。

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文香にとっては、引越し蕎麦の本来の意味よりも「一緒にご飯を食べよう」が本心であり、親睦を深めるためのコミュニケーションに過ぎません。だけど、真理雄は彼なりに、いや理系なりに「一緒に引越し蕎麦を食べない?」の意味を解釈して、実現しようと奮闘するのです。

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思い返せば、綺麗な花火を見たらその歴史や背景にある物語を知りたいのが文香。反対にその色の秘密を解き明かしたいと思うのが真理雄でした。文系と理系の性とでもいうべきか、幼い頃から物事の捉え方が違う2人。

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引っ越し蕎麦は序の口で、以降もトイレットペーパーなど日常品の買い出し、家事の分担、害虫の駆除……など、日常のありとあらゆる面で対立する2人の思考回路。その様子は、読者である私たちも職場などで経験したことがあるような“文系・理系あるある”そのもの。思わず頷きながら読み進めてしまいます。
 

「違う」から生まれる新しい発見、感情


そんな“文系・理系あるある”が本作の面白さであり、魅力でもありますが、なんと言っても注目したいのは文香と真理雄の関係性です。

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文系・理系という思考の違いによって衝突しながらも、決していがみ合うことなく、互いを許容し折り合いをつけながら共に生活をする2人。少々不器用ながらも相互理解に溢れた日々は、同居生活よりも“異文化交流”という言葉がぴったりです。

同じ思考回路の人と過ごすのも楽しいですが、違うからこそ生まれる新しい発見、そして違いを受け入れた先に育まれる感情がある。『お前の寝言がわからない』は、そんな「違う」ことで紡がれる奇跡があるのだと教えてくれます。

また、ギャグコメディと見せかけて、最後に待ち受ける予想外の“きゅん”もお見逃しなく!

 

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<作品紹介>
『お前の寝言がわからない』
永田礼路 (著)

この国の教育のシステム上わかりやすく雑に2分されるレンズがある。それは「文系」と「理系」。文系女と理系男が突然一つ屋根の下で暮らしたら……!? どこかズレてて笑える異文化同居コメディ!
 


<作者プロフィール>
永田礼路

兼業漫画家、医師。「アフタヌーン」(講談社)四季賞2013年冬のコンテントで藤島康介特別賞受賞後、同誌の2014年5月号にて読切り「虚ろ羽の飛ぶ海」でデビュー。代表作に『螺旋じかけの海』(既刊4巻)、短編集『君の薫る星』、『お前の寝言がわからない』など。
Twitter:@nagatarj

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