夫婦やカップルなど男女2人で外食した際にビールとカクテルを頼むと、男性の方にビール、女性の方にカクテルを勝手に置かれる。定食屋で女性のご飯が小さいお茶碗に盛られる。ホントは大盛りでも食べられるのに。こんな「食事にまつわるジェンダーバイアス」にモヤモヤしたことはないでしょうか。

『作りたい女と食べたい女』は、食事にまつわるジェンダーから解き放たれた2人の女性のストーリーです。

冒頭に登場するのは「作りたい女」の野本さん。料理好きで、作った料理をSNSに日々アップしている。「今日もおいしそう」とコメントがいくつかついてますが、若干悩んでいる様子。

「料理上手は家庭的」「女なら少食」?食事にまつわるジェンダーバイアスから自由に『作りたい女と食べたい女』_img1

 

なぜなら、本当に作りたいのは再現レシピ、デカ盛りとかだから! でも⋯⋯

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自分自身は少食で作っても食べきれない。地元から離れて就職したから仲のいい人もいない。SNSでもコミュニティはそんな広くない。

アートが観てくれる観客がいないと成立しないのと同じように
料理も「食べる」までがないと成立しないんだな

と、自分の作った料理をもぐもぐと食べながら、野本さんは思うのでした。

 

ある日、帰宅するとマンションのお隣のお隣さん・春日さんとエレベーターが一緒になってしまう。春日さんは、部屋にいても足音で在宅がわかってしまう大柄の女性。同じ階で降りるのなんか気まずいな、と思ってると、野本さんはあることに気づきます。

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住人さんが大量のフライドチキンを持っている!

な なんだその量

と驚きつつも、フライドチキンの自作もいいよね、とじっとフライドチキンを見ていると春日さんと目があってしまう。

なんかパーティですか? いいですね〜と野本さんが焦って声をかけると、意外な返答が。

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自分の部屋に戻ってから「えっ、あの量をひとりでーー⁉︎」と驚きまくる野本さん。驚きの後に思ったことは、

お隣のお隣さんにそんな逸材がーー‼︎

あの量を食べているところを見たい、お近づきになりたい、そしてもしかしたら私の料理を食べてもらえるかも? とうずうずするも、突然自作料理を持って現れる同じ階の住人なんて怖いよね、と、心の衝動をぐっと抑えるのでした。


翌日、ある出来事で気分が一気に下がった野本さんは、「この沈んだ気分をアゲてくれる料理は 食材は⋯⋯」と、スーパーでどデカい牛肩ロースブロックをふらっと手に取ります。

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そして無意識のうちに、大量の牛喃飯と牛肉湯を作ってしまっていました。

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どうしよう、食べきれない、と困っていると、あっ、とお隣のお隣さんを思い出し、彼女の部屋を訪ねます。

こうして「作りたい女」と「食べたい女」が出逢い、見事に需要と供給がマッチングするのです。

ですが、きっかけになった野本さんの、気分が沈む出来事というのが、「食事にまつわるジェンダーバイアス」でした。

会社で自作のお弁当を食べていると、同僚の男性が急に「あっ野本さん 自分で弁当持ってきてるんだ すごいな〜 俺ぜったい無理」と言ってきました。

やれば案外続きますよ? 簡単なものばっかりだし、と野本さんが答えると、彼はズイッと身を乗り出して言ったのです。

でも そうやってサラッと言えちゃうのかっこいいね

仕事も家事もできるって感じ!

そして立て続けに言ったのは、

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「いいお母さんになるなって思う」「彼女には弁当作ってもらいたい」と勝手に言われて野本さんは何も言えなくなりました。

自分のために 好きでやってるもんを
「全部男のため」に回収されるの
つれ〜な〜〜⋯⋯

「作りたい女」野本さんは、「女性らしい!」「料理上手だね!」と誰かに褒められたいわけではなく、再現レシピやデカ盛り料理をとにかく作りたい。ただただアーティストや職人気質なのですよね。

一方、「食べたい女」春日さんは、第2話で定食屋に入った時、ご飯の量にモヤモヤしてしまいます。

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ごはんの量 少なめにしときましたよ!

隣の男性と同じからあげ定食を頼んだのに、明らかにご飯の量が違う。
「普通に注いでください」とハッキリお願いするも、一瞬、「??」と要領を得ないでいた店主の前で、ばくばくと勢いよく普通盛りご飯とからあげを食べる春日さん。

それぞれの日常で「ジェンダーへの偏見」に遭遇している2人は、「作りたい」と「食べたい」でマッチングした後も「対等であること」を大事にします。
でも、それは「作りたい女」が無理して大量のご飯を食べたり、「食べたい女」が凝った料理を頑張って作ることではないのです!
2人がどんなふうに対等であろうとしているのかは第2話以降に描かれていますよ。

そして、本作は「作りたい女」が「食べたい女」と出逢うことで、自分を取り戻し、癒されていくストーリーでもあります。

男性社員に言い返せなかった「作りたい女」野本さんに対し、「食べたい女」春日さんは、主張をするところはきっぱり主張します。時に、ビール大ジョッキを一気飲みする、という大胆なアクションで示すことも。

冒頭のエレベーターで出逢った時、野本さんはきっと「女一人でもあんなにフライドチキンを買っちゃっていいんだ! 自分が食べたいだけ買っていいんだ!」と、「食事にまつわるジェンダー」にとらわれていない彼女の姿に、心がゆるむ感覚を得たのではないでしょうか。

何度も共に食卓を囲むうち、春日さんの豪快な食べっぷりに癒され、自由に作りたいものを作って嬉しそうな野本さん。2人の様子を見ていると、心もお腹もいっぱいに満たされる気持ちになれますよ。
 

 


【漫画】『作りたい女と食べたい女』第1話を試し読み!
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『作りたい女と食べたい女』
ゆざき さかおみ (著)

ひとり暮らしで少食、作ったところで食べきれない。けどもっと作りたい! 料理が大好きな「作りたい女」野本さんは、そんな想いと職場のストレスから、 うっかり食べきれないほどの料理を作ってしまう。 そんな時、大量にフライドチキンを買っていたお隣のお隣に住む春日さんのことを思い出し、思い切って夕食に誘ってみたら⋯⋯? Twitterで話題のシスターフッドご飯漫画!


作者プロフィール

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ゆざき さかおみ
はいらなくても、いいじゃないか』(B.PilzCOMICS)、『深夜0時に腹が鳴り』 (シャルルコミックス)などが代表作。現在、ComicWalker(KADOKAWA)にて『作りたい女と食べたい女』を連載中。
作品公式Twitter:@Tsuku_Tabe


構成/大槻由実子

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