アマゾン創業者も推薦するSF作品

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次に紹介したいのが、マスクに加えて、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスも推薦する宇宙を舞台にした壮大なSF小説『デューン 砂の惑星』です。2021年に映画化されて、日本でも公開され、改めて知名度が高まりました。

舞台は、はるか未来の荒涼とした砂漠の惑星で通称“デューン”と呼ばれる「アラキス」。この星は、宇宙を支配するといわれる「メランジ」と呼ばれるスパイスを産出する唯一の惑星です。

AI(人工知能)を搭載する機械による反乱を鎮圧した人間は、宇宙の様々な惑星を支配する帝国を築いていました。中世も想起させられるこの世界で、絶大な権力を持つのが皇帝「パディシャー」です。

しかし帝国では、メランジの力で惑星間航行を独占する「スペースギルド」や超能力を持つ種族などが勢力を拡大し、その支配は安泰ではありませんでした。

こうした状況に危機感を募らせた皇帝は、メランジの採掘権を持つハルコンネン家とそのライバルであるアトレイデス家を対立させようとします。そして両者の争いに帝国が介入し、メランジを産出するデューンを一気に掌握することを狙います。

アトレイデス家の当主は殺されて、アラキスは帝国直轄領となり、すべて皇帝の思惑通りに進むと思われました。しかし、砂漠に逃れたアトレイデス家の生き残りで未来を見通す能力を持つポールが立ち上がり、戦いを挑みます。

 

マスクが考える「AIと人類」の関係性

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メランジをめぐる争いは、現代社会におけるエネルギー争奪戦を彷彿とさせます。再生可能エネルギーの必要性は叫ばれていますが、石油や天然ガスは今も変わらず、国家と人々の生活を支える生命線です。ウクライナ危機ではロシアからの天然ガスの供給に依存する欧州諸国がウクライナを支援するかどうか悩む場面もありました。

マスクは別の観点からもこの本を評価しています。「素晴らしい。(デューンの著者は)AIを規制することを提唱している」。マスクはAIが人類にとって脅威になる可能性があると繰り返し指摘しています。2017年には「AIが第三次世界大戦を引き起こしかねない」とツイートしました。

マスクはAIの知性が人間を超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」に到達すると、人間が制御できないようになり、人類を滅ぼす可能性があるという説を信じており、「AI開発を規制すべきだ」と主張しています。