国内の皇室のご葬儀の際、女性皇族は喪服に漆黒の宝石「ジェット」を付けられています。それぞれの方の個性に合わせたデザインのブローチやネックレス、イヤリングが控えめに輝いているのです。
2022年9月、英国・エリザベス女王の国葬に参列された雅子さまの装いは、世界の人々から「さすがは日本の皇室」と讃えられました。とりわけ、気品を感じさせる「ジェット」に注目が集まったのです。
皇室の喪のスタイルに欠かせない「ジェット」の魅力を、皇室の装いに詳しいファッション評論家の石原裕子さんに伺いました。
彫刻しやすく、さまざまなデザインがある「ジェット」
――エリザベス女王の国葬の際に、雅子さまは漆黒の宝石を身に付けられていましたね。私たち一般の人は、葬儀の際には白いパールをつけることが多いので、目を引きました。
石原裕子さん：あの漆黒の宝石は「ジェット」といって、樹木の化石から作られた特別な宝石です。皇室では、ご葬儀の際には「ジェット」を身に付けるとされているんですよ。ブローチとネックレス、イヤリングの３点セットでお使いになりますね。
――雅子さまは、大きな丸いイヤリングが優しそうな印象ですてきでした。
石原さん：お顔立ちのはっきりした雅子さまには、碁石のようなふっくらと丸いイヤリングがとってもお似合いでしたね。
「ジェット」は彫刻のしやすい素材です。さまざまなデザインがあり、女性皇族の方々もお好みに合わせて使われていますね。
――どのようなデザインがありますか。
石原さん：三笠宮寛仁（ともひと）さまの「斂葬の儀」で雅子さまが付けていらしたブローチには、彫刻が施されています。
――波のようなデザインが、動きがあって美しいですね。
石原さん：高円宮憲仁（のりひと）さまに最期のお別れを告げる「拝訣の儀」で美智子さまがお付けになっていたのは、ひし形のイヤリングでした。美智子さまはシャープなデザインがお好きですね。ネックレスは同じ大きさの丸い粒がそろったものでした。
――ネックレスの長さはどうでしょう。
石原さん：三笠宮寛仁（ともひと）親王妃の信子さまが安倍晋三元首相の国葬の際に身に付けていたネックレスは、先の方がだんだん大きい粒になっているボリュームのあるデザインでした。長さもありましたね。
――どれも角度によって輝きが変わって、存在感があります。女性皇族の方々を見ていると、ネックレスは若い方は短めで、年齢を重ねるにしたがって長くなるようですね。
石原さん：そうですね、あとはお好みで選ばれているのでしょう。一般の人たちも、ブラックスーツに「ジェット」の３点セットを持っておくといいですね。同じ喪服でもいつもと違ったアクセサリーをつけることで、ミステリアスでエレガントなファッションになります。
詳細はこちら＞＞
石原裕子（いしはら・ゆうこ）
ファッション評論家。長年に渡りパリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークのプレタポルテコレクションを取材し、世界のファッション業界事情に精通している。即位関連の一連の儀式の間、メディアで雅子さまの装いを分かりやすく解説。現在、テレビ・雑誌・講演などで活躍中。「ファッションチェック」という言葉の発案者でもある。
【写真】漆黒の宝石に込められた想い…皇族の方々の「ジェット」のコーディネート
▼右にスワイプしてください▼
1 2016年11月4日、三笠宮崇仁さま「斂葬の儀」にて。写真／ロイター/アフロ
2 2012年6月14日、三笠宮寛仁さまの「斂葬の儀」に参列される皇太子さま（現・天皇陛下・以下同）と雅子さま。写真／代表撮影/AP/アフロ
3 2002年11月23日、高円宮慶仁さま「拝訣の儀」にて。写真／The Asahi Shimbun
4 2022年9月27日、安倍晋三元首相の国葬に参列された信子さま。写真／代表撮影/ロイター/アフロ
5、6 2022年9月19日、英国・エリザベス女王の国葬にて。写真／代表撮影/ロイター/アフロ
7 2022年9月19日、ウェストミンスター寺院での国葬に向かわれる天皇皇后両陛下。写真／REX/アフロ
8 2022年9月19日、英国・エリザベス女王の国葬にて。写真／代表撮影/ロイター/アフロ
キャプションは過去の資料をあたり、敬称・名称・地名・施設名・大会名・催し物名など、その当時のものを使用しています。
構成／熊木彩乃
Comment