2021年に『世にも奇妙な物語』内で放送された『三途の川アウトレットパーク』というドラマを覚えていますか? コロナ禍で家にいる時間も多かったことと、「死」をテーマにした内容が印象に残っている方もいるのではないでしょうか。実は同名の原作が先にあり、ドラマ化されたという経緯があります。その原作から続く「三途の川アウトレットパーク」で起きるストーリーが単行本化されました。

ここは三途の川アウトレットパーク。才能、容姿、環境、前世で積んだ徳を使って、来世で欲しいものを何でも買えて、前世での思い出に浸る特設シアターもあります。

 

あの世行きの舟に乗り遅れると大変なことになります。

アウトレットパークに入ったこの親子、母親から来世で欲しいものを聞かれた息子さんは、何かを言いかけてやめました。

 

勉強をさせることが成功した未来につながると信じている母親。
この子が本当に欲しかったものは、何だったのでしょう。そして、母親の思いはこの子に通じるのでしょうか。
二人がなぜ亡くなったのか、生前どんなふうに過ごしていたのかを知ると、互いの気持ちが切なく、心が苦しくなります⋯⋯。

この三途の川には、生まれ変わりの法則があるようです。

 

生まれ変わりの法則① ガチャで決まる


来世は人間になれるとは限らない。そこで登場するのは「親ガチャ」ならぬ「生まれ変わりガチャ」。
今世で積んだ徳で来世が決められるのではないのは、ある意味公平なのかも。

 


生まれ変わりの法則② 受け継がれる特性


そして、生まれ変わっても受け継がれる特性があります。それは、前世で近しい間柄の人の身体的特徴やクセ。来世では関係性が変わったり、家族になれなくてもどこかでつながっているのかもしれない、と感じさせる法則ですね。

 

そして、賽の河原から聞こえる謎の声の主。舟に乗り遅れ、誰かの思い出を食べてさまよい続ける「ボガ」と呼ばれる人間だった者たち。

 

このボガを見ていると、死者にとって一番悲しく虚しいのは、生きている人々から忘れ去られることなのだと感じます。ディズニー映画の『リメンバー・ミー』を思い出させます。

4月19日に発売された1巻は基本的に1話完結型のストーリーですが、2巻に続く謎を残して終わります。
そして、『世にも奇妙な物語』で放映された原作はこの単行本には未収録。なので、ドラマを観て内容をすでに知っている方でも新しい「三途の川アウトレットパーク」の物語を読むことができますよ。

ちなみに、『世にも』で使われた原作は、こちらから読めます。

1巻収録の3話ともクオリティが高くドラマティックなので、全部ドラマ化してほしい⋯⋯!


作者・寺田浩晃さんは難病にかかったのをきっかけに、自分が生きた証を残したいと考えるようになり、『三途の川アウトレットパーク』が生まれました。
本作は「死」を意識した作者だからこそ描ける、今世の死と来世にまつわる輪廻転生のストーリーなのです。

あとがきで「三途の川アウトレットパーク」という設定が日本的であると書いています。無宗教のように見えて神様や前世・来世の存在をなんとなく信じている日本人だからこその発想なのだ、と気づいたのは、やはり「死」を意識したことで、日本社会を俯瞰する視点を持ったからなのではないでしょうか。

寺田さんの短編集『黒猫は泣かない』も発売中です。もし本作の世界観にグッときた方はこちらも読んでみてくださいね。
 

 

『三途の川アウトレットパーク』第1話を試し読み!
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<作品紹介>
『三途の川アウトレットパーク』
寺田 浩晃 (著)

2021年、『世にも奇妙な物語』内で実写化され大反響を得た短編が、連載作に! 死者が訪れる、三途の川の手前にあるショッピングモール『三途の川アウトレットパーク』。そこでは前世で貯めた徳を使い、来世用に買い物が出来るという。アウトレットパークの案内人・烏目は、そこで様々な死者の生き様や、来世への想いに触れる。死者の心に干渉する事は叶わない。ただその願いを知り、見届けるのみ。
さて、今日のお客様は⋯⋯!?

作者プロフィール
寺田浩晃

2018年「サンデーS」にて漫画家デビュー。いくつかの短編発表を経て、連載の準備中に身体を壊し、2021年、YouTubeにて自身のチャンネル「スタジオGARAGE」を設立し、個人で漫画の発信を始める。同年6月、短編漫画『三途の川アウトレットパーク』がフジテレビ『世にも奇妙な物語』にて実写ドラマ化。

Twitterアカウント:@terada_hiroaki


構成/大槻由実子
編集/坂口彩