タワマンのママ友関係はこじれやすいと言います。同じ敷地でも、上層階と低層階では生活レベルが違う事実がマウンティングや嫉妬をかきたててしまうのでしょう。同じタワマンの上・中・下の階に住む家族3組の母たちの外面とその実情を描いた『タワマンに住んで後悔してる』が6月1日に発売されました。

『タワマンに住んで後悔してる』(シリーズ立ち行かないわたしたち)

登場人物は、42階に住む堀家、26階の瀧本家、6階に引っ越してきた渕上家です。それぞれの母親がメインで話が進みます。

 

九州から東京に引っ越してきた渕上家。小学五年生の息子・悠真は野球がうまく、早々に注目の的。すぐに馴染めそうだと安心する母親・舞は周囲がもう中学受験の準備をしていることに驚きます。そんな彼女に、引っかかることを言ってくる人物が。

 

それは最上階の42階に住む堀家の母親・恵。自分の息子よりも野球がうまいのが気にいらないようです。そんな様子をフォローしてくれたのは、26階の瀧本家の母親・香織でした。

 

彼女は慶應出の、共働きで家事もこなしているバリキャリ。その夜、子ども同士でも親の職業の話をしていると息子から聞いた舞は「東京⋯⋯ ちょっと怖いな⋯⋯」と感じます。

香織の助言もあり、私立中学ならこんな立派なところで野球ができるよ、と息子のモチベーションを上げて塾に通わせることにした舞。タワマンママ友グループのLINEに感化され、息子にはっぱをかけます。

 

最上階の恵にマウンティングされて落ち込み、共働きで子どもとのイベントにも協力的な夫を持つ香織がうらやましくなってくる舞。息子は塾よりも野球を続けたいみたいで、本当に中学受験という選択が正しいのか、迷う彼女なのでした。

舞が憧れている香織の実情は、一人で仕事と家事を必死にこなす姿でした。夫は完全に仕事優先で家のことは全て彼女に任せっきり。仕事で飛躍のチャンスがあっても、子持ちだからという理由で、手柄を他の社員にとられてしまう現実に香織は絶望していました。

 

その息子の陽斗は、野球に夢中になって塾の成績が落ちている。本当は野球をやめさせたいけれど、夫はいい顔をしない。タワマンママ友の忘年会では、専業主婦の恵にヘルパーを雇っていることをさりげなくディスられ、イラっとします。

そんな恵は、ことあるごとに舞にマウンティングし続けていました。息子たちがケンカした時、恵の息子・奏太が悠真に「お前なんて安い低層階に住んでるくせにっ!」と叫んだのを見て、舞は絶句します。でも恵は笑ってしれっと言うのです。

 

東京に来てからフラストレーションが溜まっていく一方の舞は、息子の受験勉強にのめり込みます。野心を燃やす舞、限界を感じている香織、慢心している恵。
3人のママ友たちの結末は、意外なところに終着します。

実は、彼女たちの終着点は同じような場所です。

 

「勝ち組」の回し車から自ら降りるのは難しい


タワマンに住める時点で十分「勝ち組」なのに、その中でさらに「勝ち」を目指そうとするママ友たち。息子たちが野球をやっているというのが示唆的で、誰の息子が野球でも社会でもエースになるか? を競っているかのように見えるんですよね。

よくビジネスの世界では「右肩上がりを目指してやっと横ばい」と言いますが、タワマンの部屋を買えても、それを維持することの方が大変だということが3人の生活を見るとわかるのです。ハムスターの回し車のように、一度入ったらもう抜けられず、ぐるぐる回り続けるしかない。

いつまで続けるんだろう? と息切れする瞬間があったら、一度自ら回し車から降りるのが本当は良いのでしょうが、自主的に降りる=今の生活レベルを落とすのはなかなかできません。この3人のように今の生活が壊されて、強制的に回し車から降ろされた方がいいのかもしれませんね⋯⋯。

 

『タワマンに住んで後悔してる』第1〜3話を試し読み!
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<作品紹介>
『タワマンに住んで後悔してる』
窓際三等兵 (原著), グラハム子 (著)

同じタワマンの低・中・高層階に住む家族3組の虚栄と内情。そこから見えるのは救いか、絶望か。「タワマン文学」の先駆者、窓際三等兵氏のオリジナル描き下ろし原作を、
『親に整形させられた私が母になる』などの話題作をもつグラハム子氏が漫画化!

作者情報:
窓際三等兵
早稲田大学社会科学部卒、42歳中年男性という設定のTwitterアカウント。 タワマン文学の先駆者。
Twitterアカウント:@nekogal21

 

グラハム子
漫画家。著作に『女子校デイズ』『美淑女戦隊オバサンジャー』『親に整形させられた私が母になる』『夫の公認なら不倫してもいいですか?』(いずれもKADOKAWA刊)がある。
Twitterアカウント:@gura_hamuco

 


構成/大槻由実子
編集/坂口彩