もしも誰かに、「いい子なんだけど、女として見られないよね〜」と言われたら、「お前は何様だ! 別にお前に女として見られなくてもいいんだよ!」と怒り狂うところですが、それをそのまま受け取って落ち込んでしまう人もいます。思えば、若かりし頃なら凹んでしまったかもしれません。その理由の一つは、自分に自信が持てずにいるから、ということではないでしょうか。電子少女コミック・姉フレンドで連載中の『おいしい香りは君から』主人公のアラサー女子も、その一人。彼女はそんな自分から変わることはできるのでしょうか?


古い団地に住み、“一人居酒屋”が趣味の女子はモテない?


島本亜衣はスポーツクラブで働く26歳の女性。ショートカットが似合う、かわいらしい女性で、食べることとお酒が大好き。でも“花より団子”を選んでしまうせいなのか、付き合う男性には軒並み、「いい子なんだけど、女として見られない」と言われがち。そこで言い返すこともできず、笑顔でぐっとこらえつつも、なかなか男女の仲に発展しないことを悩んでいました。

 

相手に「しょうがないね」と言ったものの、亜衣の心は深く傷ついています。そんな彼女にとっての癒やしの場所は、自分の家。ずっと憧れていたレトロな団地に暮らしはじめ、そこには自分でコツコツ集めたアンティークの家具などを置き、家に帰るとほっとできます。また、料理も得意でお酒も大好きなので、夜な夜な“一人居酒屋”をするのが亜衣にとって最高のひとときなのです。

 

この日も、フラレたことを忘れたくて“一人居酒屋”の準備を進めていると、玄関の外ですごい音が響きます。恐る恐る玄関の扉を開けると、そこには背の高い男性が横たわっていました。思い切って声をかけてみると、空腹のあまり低血糖になって倒れてしまったというのです。

 

そんな状態を見かねた亜衣は、彼のために卵かけごはんを作り、玄関先にビール瓶のケースを出して机代わりにして振る舞います(見知らぬ男性を家に入れたくないので、苦肉の策)。男性が卵かけご飯を一口食べると、その美味しさに表情が変わります。それを見た亜衣は、卵かけご飯にかけている醤油は「牡蠣醤油」であることを紹介し、ついついその美味しさについて語ってしまっていました。見知らぬ男性に何を熱く語っているのか! と我に返ったのですが、その男性は満面の笑みを浮かべてくれ、亜衣の上の階に住んでいる大越と名乗りました。
 

 

団地上階に住む謎の男性の正体は?


翌日、職場のスポーツクラブでこの出来事を同僚に話すと、「なんかそれヤバくない?」と突っ込まれます。亜衣は「悪い人じゃなさそう」と思ったものの、醤油の話をしただけで、大越という男性がどんな仕事をしているかなどは謎のまま。女性の一人暮らしということもバレているし、「引っ越しも考えたほうがいいんじゃない?」と言われます。

でも、亜衣にとっては憧れていた団地住まいで、そう簡単に引っ越したくはありません。住み始めてから彼と会ったのは昨晩が初めてで、意外と会わないのでは? と思っていたところ、仕事帰りのコンビニでばったりと彼の姿を目撃してしまいます。

 

大越はインスタントラーメンの棚をじーっと見つめていたかと思うと、同じ味のカップラーメンを無造作にカゴに入れてレジに向かいます。彼に気づかれたくなくてこっそりと見ていた亜衣でしたが、食べることが大好きな彼女からしてみれば、「まさか、あなたのお食事それだけですか――!!!」と、居ても立っても居られず、思わず彼に声をかけてしまいました。

彼女に気づいた大越は、「飯テロさん?」と答えます。彼曰く、自宅で仕事をしている時に、亜衣が“一人居酒屋”のために作る料理の美味しそうな匂いが漂っていたため、亜衣のことを勝手に「飯テロさん」と名付けていたのです。

彼は、「亜衣ちゃんに渡したい物があるんやけど」といい、帰宅後に桐箱に入った立派な佐賀牛を渡してくれました。大越は自分が漫画家であることを名乗り、担当さんが九州に出張先から送ってくれたものといいます。しかし、高級牛肉をいただいたのはいいものの、くれた本人はさっきコンビニで買った同じ味のカップラーメンを食べるってこと? とモヤモヤしてしまう亜衣。思わず、「うちに食べに来ませんか?」と誘ってしまいます。

 

怪しい人かもしれないのに、思いがけず自分の家に誘ってしまった亜衣。“一人居酒屋”に初めて客人を招くことになり、大越はクラフトビール持参で来てくれました。部屋に招き入れると、「なんか落ち着くインテリアやねー ヴィンテージ家具かなんか?」と大越に褒められたものの、元カレに「亜衣ん家ってばあちゃん家みたい」と言われた時のことがよぎり、大越の言葉を素直に受け取ることができず、顔を曇らせてしまいました。

せっかくの高級牛肉を食べるというのに楽しまなきゃ! と気を取り直す亜衣。大越と二人でしばらくはすき焼きを堪能していましたが、飲み食いが大好きで、古い団地に住んで古いものに囲まれているのが好きな自分は、元カレの時のように恋に失敗するんじゃないかという考えがどんどん頭の中を占めてしまい、明るく振る舞えなくなってしまいました。

 

さっきまで幸せそうな表情で佐賀牛を頬張っていた亜衣が、悲しそうな顔をしていることに気づいた大越。大越はどういう言葉を亜衣にかけるのでしょうか?
 

ご近所づきあいラブに、キュンキュン必至!


同じ団地の上下階に住む、大越と亜衣。亜衣の手料理がきっかけで二人は出会うことになったわけですが、大越は漫画家で、関西弁を話す年上ということくらいしかわからない謎多き男性。男性にフラれてますます自信が持てなくなった亜衣とどう関わっていくことになるのでしょうか? 大越はイケメンということもあり、女性にもモテそうですし、本人はそのことを自覚していて、女性と遊んでいたこともある様子。物語はそんな二人のご近所づきあいや、心理描写を丁寧に描いていきます。

亜衣はたまたま立て続けに「女としてみられない」とフラレてしまったものの、本当は素直で愛らしい女性。自分の好きなものがはっきりしていて、それを大切にしているところも魅力的です。大越はそんな彼女の魅力に気づいていくことになるのですが、女慣れしているはずの大越も、彼女を前にするとどうも勝手が違うよう。そんな二人を見ていると、読み手のこちら側もやきもき、ドキドキしてしまいます。

本作は、『青島くんはいじわる』が電子コミックで大ヒットした吉井ユウ先生の最新作。先生の描く男性は色気があって、とても魅力的。キュンキュンする展開も期待大です! 
 

 

【漫画】『おいしい香りは君から』第1話を試し読み!
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『おいしい香りは君から』
吉井ユウ 講談社

「女として見れない」という理由で彼氏からフラれてしまったアラサー女子の亜衣。自分で自分を励まそうと、趣味の「お家で一人居酒屋」を楽しむため準備中。すると玄関から大きな物音が。おそるおそる様子をうかがうと、男の人が倒れている……! 奇妙な出会いをきっかけに、同じ団地住まいで、あきらかにモテそうで関西弁で年上な彼との距離は急接近。恋のご近所づきあいの行方は──?