男を憎んでいるのも不毛。だから、男性に早く変わってほしい


――そこで改めて聞きたいです。世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2022」で日本は先進国の中で最低レベルの116位。そんな国で、女たちが自分らしく幸せに生きていくためには何が必要なんでしょうか。

荻上 やっぱりインディペンデント(自立)ですよね。ちゃんと自分で仕事をしてお金を稼がないと。

キムラ 私は自分がどうしたいのかを自力で勝ち取っていくことだと思います。生きていればいろんなことがあって苦しいし、日本にいたくないと思うこともありますけど、それでも負けずに生きていかないとね。

木野 私は、いいかげん男性が変わってほしい。女性がちゃんと仕事を続けるためには、男性の協力と意識改革が必須でしょ。女性が家庭と仕事を両立させるためにどれだけ苦労してるか、この過酷な状況を目をそらさず見てほしい。

 

キムラ 本当にそう。

木野 子どもを産んで、育てて、仕事もして。こんなに大変なことを女性に押しつけて、何とも思わないんですかと叫びたくなるときがある。こんな状況、いつまで続ける気ですかって問いたい。

筒井 大変ですよね、女の人が働くのって。

木野 最近の女性活躍だなんだと持ち上げて、まるで恵んでやってる風情で女性に権利やポストを与える状況も腹立たしい。じゃあどうすりゃいいんだと言われそうだけど、別に喧嘩したいわけじゃない。女性も男性も協力し合って一緒に仕事頑張りましょうよってお願いしたい。お互い気兼ねなく仕事ができる職場は楽しいはず。そんな日が1日も早く来ることを願うばかりです。

荻上 それにはまず政治家のおっさんたちが変わらないとダメなんですよ。

木野 まず、言っている私自身が試されていることを百も承知で、頭の固い古い人には早く辞めていただきたい。

キムラ あとはもともとの教育じゃないですか。女が立ち上がる教育をしていかないと。

筒井 やっと家庭科が男子も女子もやるようになったと聞いて希望を感じました。

木野 だから、私、若い男の人たちには期待しているんです。学生の頃から女性と一緒にコミュニケーションをとって物事を進めていくことを学んだ世代なら、この壁を飛び越えてくれるんじゃないかと期待している。

キムラ 早くそうなってほしいですよね。

木野 これは私たち世代の反省もあるんです。私たちは男社会で生き抜いていくために、ともすると男性と対立して友好的なコミュニケーションをとることを諦めていたところがありました。どうか今の女性たちには同じ轍を踏まないでほしい。男を憎んで、ちくしょうとか言ってるのも不毛ですからね。

荻上 疲れちゃうんですよね。

木野 お互いにいいことがひとつもない。それが分かっていても、この状況を変えるにはまだまだ時間がかかる。だからこそ、こういう映画が必要なんだと思う。この映画は、女たちへの応援歌であり、挑戦と挑発の映画だと思いました。この映画の波紋がじわじわと広がっていくことを願います。

『波紋』 2023年5月26日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中 配給:ショウゲート ©2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ

筒井 私、この映画のラストシーンがすごく好きなんですね。

キムラ 私も大好き。本当涙出た。清々しくて。

筒井 最後に依子さんはフラメンコを踊るんですけど、あのシーンはもし誰もオッケーをくれなかったら自分がオッケーを出そうというつもりで踊っていました。

 

キムラ あの依子さんを見ていると、頑張れー! って言いたくなる。で、自分自身も大丈夫だ、明日から頑張れるぞという気持ちになれるんですよね。

筒井 フラメンコって足踏みが大事で。リズムに乗りながら大地をグッと踏みしめるんですけど、あそこはもう「私はここにいる」という感じで。

キムラ あそこで依子さんが生まれた感じがした。殻を突き破ってバリバリバリって。

筒井 最後の「オーレ」は自分に対しておめでとうという気持ちでした。きっとあの依子の姿が伝えてくれるものっていっぱいあると思うんです。あの依子のように、私たちも自分にちゃんとオッケーを出して生きていけたら、もっと自由に、もっと元気に生きていける気がします。

 

<作品紹介>
『波紋』

 

2023年5月26日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中

出演:筒井真理子
光石研
磯村勇斗/安藤玉恵 江口のりこ 平岩紙
津田絵里奈 花王おさむ
柄本明/木野花 キムラ緑子
監督・脚本:荻上直子
©︎2022映画「波紋」フィルムパートナーズ



撮影/塚田亮平
取材・文/横川良明
構成/山崎 恵