誰の人生にも「物語」があります。
人は、成仏できない物語があると辛い気持ちになり、前向きな物語を描けないと落ち込んだりモヤモヤしたりします。
この連載では、心理学者でキャリアコンサルティング技能士の杉山崇先生が、「物語」という名のライフキャリアを整える方法を皆さんにお伝えしていきます。
さて、今回のテーマは「納得できない人事異動」です。もしかしたら、あなたも経験があるかもしれません。
人事異動はどこの組織でも悲喜こもごも……。たくさんのドラマが生まれ、多くの方が「会社(組織)と私の物語」に翻弄されています。筆者の私もその一人です。
そもそも、なぜ私たちは納得できない人事異動を体験することになるのでしょうか?そして、その体験になんの意味を見いだせるのでしょうか?
今回は、「納得できない人事異動」という日本のごくありふれた悲劇と、悲劇があるからこそたどり着ける喜びについてご一緒に考えてみたいと思います。
私たちは「宮様」にお仕えしている?
さて、突然ですが、「宮仕え」という言葉をご存知ですか?
日本では会社に勤めることを「宮仕え」と言うことがあります。「宮」とは皇族、特に内親王を表す……などと説明するとややこしい話になってしまいますね。
ただ、大事なことは、私たちは「宮様」には逆らえない……ということです。高貴なお方なのですから、尊重して、そのご意向に背いてはなりませぬ。私たち庶民は宮様には万難を排して従わなければならないのです。
そう、「絶対に逆らってはならない高貴なお方」が「宮様」なのです。
ここで、会社勤めが「宮仕え」と呼ばれる理由が見えてきましたね。そうです、私たちにとって「会社」とは宮様のように逆らえない存在なのです。私たちは会社のご意向を自分よりも尊んで、従わなければならないのです。何だか、「従業員」という言葉が重たく響く現実です。
納得できない人事異動は「命」を奪われるようなもの
さて、ちょっと気が重くなる話からスタートしてしまいました。ごめんなさいね。
ただ、これには理由があります。それは、この宮仕えこそが私たちが「納得できない人事異動」という物語を生きている根本原因だからです。「宮仕え」ですので、私たちは私たちの納得よりも宮様のご意向を優先しなければなりません。悲しい現実です。
特に自分が思い描いていたキャリアのあり方と異なる人事異動を命じられたときはショックが大きいです。自分のキャリアを生きられなくなるのですから。
キャリアとは人生であり、命です。自分のキャリアを生きられなくなるということは命を奪われるに等しい体験なのです。
納得できない人事異動を更に苦しくするものは…
特に、「宮様」である会社と信頼関係がある、会社が自分を理解してくれている……と信じていた場合はそのダメージは大きくなります。人の心は裏切りに敏感なのです。
信じていた「宮様」、自分を滅してまでもこれまで懸命にお仕えしてきた「宮様」、その「宮様」に裏切られるのですから……。その心の痛み、お察しします。
その痛みのあまり、「宮様」が敵に見えてしまう人も多いようです。退職を考える大きな理由になる場合もあります。中には「会社を訴えたい!」という方も……。
会社との信頼関係は、納得できない人事異動までは心地よいものだったかもしれません。しかし、人事異動の発令を機に、信頼関係が逆に納得できない苦しみを強くさせるのです。なんとも皮肉なものです……。
昭和の方々は「すまじきものは宮仕えかな……」という言葉を残しています。まさにそのようなお気持ちになることでしょう。
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