昔より眠れなくなった、眠りが浅くなったという悩みを抱えていませんか。ついベッドでスマホをいじったり、明日の仕事のことを考え出して眠れなくなる。眠りたいと思えば思うほど眠れない、そんな時には寝ることよりも、夢に注目してみるといいかもしれません。今夜の夢はどんな舞台で、誰に会えるんだろう、と。

『わたしの夢が覚めるまで』は、眠りが浅くて頻繁に夢を見るようになった女性の「夢の記録」です。

38歳の「その」は、小さい頃から眠るのが好きで、夢もあまり見ない方だったのに、最近は不眠がち。眠りが浅くなり、夜中の3時になると目がさめるようになりました。
二度寝するまで、それまで見ていた夢を思い出すのが夜の日課に。

 

1話の夢は、暑い日にセミとかつての知り合い「さきちゃん」が出てきます。

 

この時点ではよくわからないセミというモチーフ。夢占いだとセミは「儚さ」というそのままの意味もあれば、「再生」とか「変化」など結構いろんな意味があるようです。

続いて印象的なのは、学生時代の夢。これはよく見る人も多いのではないでしょうか? そしてこんな風に小学校、中学、高校時代がごちゃまぜになっているというのもよくありませんか?

 

懐かしいけれど、夢から覚めるともうあの時代には戻れないのだと実感する、寂しいような、ほっとするような学生時代の夢。

そして、眠くなりがちな生理中に見る夢。生理痛から逃れるように眠ってしまうそのはどんな夢を見るのでしょう。

 

こうして彼女が毎晩見る夢の話が続くのですが、そのうち何度も出てくる人がいるのに彼女は気づきます。

夢でおなじみの場所や人物、これもあるあるではないでしょうか。起きてすぐに忘れてしまっても夢の中では「あっ、またここだ」と思っていたり。いったいどんな意味があるんだろう? と不思議に思いませんか。

そのの場合は、1話でも出てきた「さきちゃん」という女性でした。彼女は故人でした。生前どんな人だったのかが昼間の生活で明らかになります。

夢の中の人物と対話できるようになるその。だんだん夢と現実が混ざりあってゆき、彼女はどうするのでしょう⋯⋯。

そのは医師に「よく夢をみるようになった」と相談すると、夢は「自分の不安と願望」のあらわれなのだと言われます。

 

ということは、夢に出てくる人たちはもう一人の自分で、その人からのメッセージというよりも、自分自身からのメッセージになるのでしょうか⋯⋯。

本作は、夜という時間帯や夢が持つミステリアスな怖さではなく、静かで浮遊感のある一面にフォーカスしているので心地よく読めます。主人公が対峙する不眠や「さきちゃん」のことはしんどかったり、ショッキングだったりするのですが、そこもクッションを挟むようにやさしく、ふわっと見せてくれます。

読んでいて思うのは、夢は、現実を裏から整えてくれているんだっていうこと。
夢を見ているレム睡眠の時には、脳が記憶を整理しているのだといいますよね。そんな大事な存在なのに、起きたら忘れてしまうのはもったいないな、と。そののように夢を思い出し、記録したくなります。今夜もどんな夢を見られるのか、眠るのが楽しみになる一冊です。

なお、本書刊行を記念して、ながしまひろみさんの原画展が東京の青山ブックセンター本店にて6月7日 (水)〜2023年6月20日 (火)の期間で開催されています。
6月10日(土)にはサイン会も開催されます!

詳細はこちらからご確認ください。
▼青山ブックセンター原画展情報
https://aoyamabc.jp/collections/fair/products/6-7-6-20-nagasimahiromigengaten

▼サイン会
https://aoyamabc.jp/collections/event/products/6-10-nagasimahiromievent

 

『わたしの夢が覚めるまで』第1〜3話を試し読み!
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<作品紹介>
『わたしの夢が覚めるまで』
ながしまひろみ (著)

主人公「その」は眠りが浅く、さまざまな夢を見ては夢と現実が混ざり合っていく。仕事でもプライベートでも取捨選択を迫られることが増え、心にモヤモヤを抱えた人たちに寄り添う、「夢」がテーマのお話。
 

作者プロフィール:
ながしまひろみ

1983年、北海道生まれ。マンガ家、イラストレーター。著書に『やさしく、つよく、おもしろく』(ほぼ日ブックス)、絵本『そらいろのてがみ』(岩崎書店)、『鬼の子』(小学館)がある。2022年2月14日からダ・ヴィンチWebで新連載『わたしの夢が覚めるまで』がスタート。
Twitterアカウント:@nagashitake
Instaramアカウント:nagashitake
公式サイト:https://nagashimahiromi.studio.site/


構成/大槻由実子
編集/坂口彩