子どもこそ「ウェルビーイング」が必要

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小澤:また、子どものウェルビーイング(Well-being)も大切だと考えています。Wellは「よい」、Beingは「状態」を意味します。「幸せ」と訳されることも多いのですが、本来は「身体的、精神的、社会的に満ちていること」を指します。そして、自分にとってちょうど良い状態の時もあれば、もう参ったなというようなしんどい状態の時もあるような、揺れ動く連続体のようなものです。

また、自分の存在意義にも関わるようなことでもあります。もう少し詳しく言うと、子どものウェルビーイングでは、「楽観性」「ここにいて大丈夫だという感覚」「主体的に社会に関わり影響している・働きかけられる感覚」の三つが重要だとされています。「楽観性」というのは、明日も大丈夫だと思える、将来に少しでも希望が持てる感覚も含まれます。また、自分が養育される環境のみならず、自分が通っている保育園や学校、学校以外の様々な場、地域の公園や図書館、そして地域自体に、「ここにいて大丈夫」という感覚を感じるような場や文化があることも大切です。さらに、あなたは一人の人間で、力がある人だよ」と尊重されて、自分の声が聴かれ、社会に反映される応答性や手応えがあることも大事です。

そのウェルビーイングの土台を作るのが「大人や周囲との良い関係性」です。その関係性が途切れたり、なくなっていて、関係性を作りたいのに作れない。そんな孤立状態に陥るとウェルビーイングが揺らぐことがあり、それにより、より孤立が深まることもあるかもしれません。

 

大人が社会との繋がりを断たれると、子どもも一気に孤立する

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――子どもの孤立が社会に存在する、しかもその数が少なくないと気づいたのは、児童精神科医として子どもたちの診療に関わるようになってからですか?

小澤:子どもは特に年齢が小さいと、家族や身近な大人を通して社会と繋がっています。どこかに行ったり誰かと会う時、身近な大人を通してそこにアクセスしています。なので、自分の極めて身近な関係の大人と社会との繋がりがなくなると、子どもも孤立します。その身近な大人との関わりが子どもにとって安全でない時、子どもはさらに孤立してしまいます。孤立によって起こる、その人が本来持てていたはずの選択肢の喪失や、願っていたことが叶わない状況になるような社会構造から、変わっていかないといけないと思います。