心臓突然死を食い止めるのに有効なAED


AEDについて、「どこにあるの?」「誰でも使っていいの?」「名前は知っているけど、そもそもよく知らない」という方もいるのではないでしょうか? 
私も自分が心肺停止で倒れる前は、AEDの存在を意識したことはありませんでした。

写真:Shutterstock

私の命をつないでくれた方達への取材を通して、迅速な救命対応への感謝が増すとともに、これからは私が誰かのためにできるようになろうと意気込んでいたのに、いざという現場で戸惑ってしまった。一秒の違いが生死を分ける、予後を左右するとわかっている私なのに……。残念。

そこで改めて、救命の現場でどう動けばいいのかを、救命のプロである本間洋輔先生に伺いました。

Q:救命活動って何をすればいいの? 何かあったら責任が持てないし、怖いです。

A:救命活動の第一歩は「大丈夫ですか?」と声をかける勇気です。

「目撃のある心停止でも救命処置が行われているのは約半分。この数はなかなか伸びません。この原因には、2つの大きな壁があると言われています。

ひとつは恐怖心。倒れてる人に対して、自分が触って何か起こってしまったらどうしよう。何をしていいのかわからない、とにかく怖い。

 

ふたつめは、恐怖と密接に関係していますが、救命処置の正しい知識がないことです。

まず大事なのは、すぐに声をかけること。もし電車の中で倒れた人がいて、みんなが固まっている状況でも、たったひとりが勇気を出して「大丈夫ですか」と声をかけると、周りの人が一気に動き始めます。命を救うアクションは連鎖していくのです。

そして救命処置とは、胸骨圧迫やAEDの使用だけではありません。たとえば、AEDを取りに走る。救急隊を現場に道案内する。急病人を人目から隠すために、壁になったりタオルなどで覆う。こういった全てが救命につながります」

Q:ひとりで救急の現場に居合わせたときはどうすればいいですか?

A:まずは119番をして胸骨圧迫。近くにAEDがあればスイッチを入れる。電気ショックをするかしないかの判断はAED自身が行います。

「心停止が疑われる状況での救命処置は、まず119番通報。そして一刻も早い胸骨圧迫とAEDの使用です。

119番へ電話すると消防庁の通信司令員に繋がります。場所・症状を伝えると、救急車を手配してくれます。また、目の前に人が倒れていることがわかると、その人の心臓が止まっているかどうかの判断からサポートしてくれます。混乱している状態でも、『呼吸の確認をするので、胸とお腹を見てください』などと誘導してくれます。119番につながれば、助けが得られると思ってもらって結構です。

その場所に自分しかいない場合は、スマホをスピーカーモードにすれば両手が空くので、指示に従って胸骨圧迫ができます」

©︎PUSHプロジェクト 公益財団法人 日本AED財団WEBサイトより引用

「もう一つの助けはAED。スイッチを入れると、最初に『119番に通報してください』と、万が一忘れていたら困る救命の手順の最初を教えてくれます。

また、AEDの使うための手順を教えてくれて、パッドを指示されたとおりに貼ると、電気ショックをするしないの判断をAEDがしてくれます。電気ショックが不要であれば胸骨圧迫を継続してくださいと言ってきます。

電気ショックが不要の場合も、胸骨圧迫で心臓に少しでも血液が流れると電気ショックが必要な震えが出てくることもあるので、2分経ったらもう1回AEDが心電図を調べるとメッセージを流してきます。頭が真っ白になった時にこそ、AEDを信頼し、その指示にしたがえば誰でも安全に使えます」

Q:自動車の免許取得の際に胸部圧迫と人工呼吸をセットで習いましたが、人工呼吸も必要ですか?

A:人工呼吸はできるスキルと意思がある時だけでいい。まずは胸部圧迫に集中!

「知らない人への人工呼吸はなかなか心理的ハードルが高いですよね。

人工呼吸をするべきか、どうやってやるのか迷っている間に胸骨圧迫が10秒以上止まってしまうと救命救急率が下がってしまいます。そこで迷うより、まずは胸骨圧迫をやっていただけたらと思います。

倒れた人が子どもの場合や、水難事故などで倒れた人が水を飲んでしまっている場合など、呼吸が原因の心停止の場合は人工呼吸を行ったほうがよいのですが、特に成人の心臓が原因の心停止では、胸骨圧迫をしっかりやっていれば、人工呼吸があってもなくても救命率は大きく変わらなかったという報告もあります」