日常で感じる「ちょっとした違和感」について井戸端会議していくこの連載。ウェブマガジン「ミモレ」とその読者コミュニティ〔ミモレ編集室〕に寄せられた皆さんのモヤモヤエピソードをご紹介していきます。

今日ご紹介するのは、家族にまつわるモヤモヤエピソードです。 

 


「お姉ちゃん、もう2年たったんだよ?」


エピソードをお寄せくださったのは、事務職として働くスズコさん(47歳・会社員)。
 


2年前に、両親を立て続けに亡くしました。余命宣告されていた母を2年介護した後に見送り、その2ヵ月後、ふいに父が亡くなりました。母についてはある程度覚悟していたのですが、父までこんなに急に……。しばらく呆然とする日々を送りました。いえ、今でも心の痛みは生々しく残っていますし、眠れない夜もあります。

私は独身で、ずっと実家住まい。今では一軒家に一人暮らしです。妹は隣県で家庭を持っていますが、思春期の頃から両親とは折り合いが悪かったので少し疎遠。

社交的な妹と違って私は友人も少なく、仕事の後はまっすぐ家に帰り、読書したり両親の遺したものの整理をしたり。

もう何十年も家族で暮らしていた家なので、蓄積された物はそれなりの量。妹に、「業者を入れて整理して、お姉ちゃんはマンションにでも移ったら?」と言われたこともあるのですが、そんなにすぐに処分してしまうのはなんだか寂しくて。自分で少しずつ整理しながら、両親との思い出を振り返っています。「あぁ、お母さんこのブラウス気に入ってたな」「お父さん、こんな本を読んでいたんだ」とひとつひとつ思いを馳せます。

先日、妹が急に連絡してきました。「最近どうしてるの?」と言うので、「相変わらずだよ。仕事して家の整理して……」と答えると、「お姉ちゃん、まだそんな感じなの?」と。

「もう2年もたつのに……、そろそろ頭切り替えなよ。もっと有意義なことに時間つかえばいいのに」

昔から変わらないキツイ妹の言葉に、さすがの私もむかっ。でもうまく言い返せず、もごもご言って電話を切ってしまいました。
 

 


回復にかかる時間は人それぞれ


ご両親を亡くされてから、思い出の詰まった家を守っているんですね。身近な人を亡くすストレスは大変なものだといいますから、スズコさんもゆっくりショックから回復している過程なのだと思います。

スズコさんはご存じかもしれませんが、「グリーフ」という言葉があります。グリーフとは、死別を経験した人が、喪失感と、なんとかこの窮地から脱しなければという気持ちの間で揺れ動き、心身が不安定になること。そんな人生の危機に、寄り添い、回復の手助けをすることをグリーフケアといいます。

死別の苦しみは、怪我や病気などとはまったく違うものです。明確な治療法はありませんし、何ヵ月たったら回復する、お葬式や相続などの手続が終わったら解決する、といったものではありません。いろんな感情、状態をいったりきたりするのが当たり前。
 

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【漫画】「両親が亡くなって2年もたつのに…」気が強い妹から痛烈な一言
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