事故物件と聞くとドキッとしたり、「怖いから」と敬遠したくなりますが、事故物件を専門にお祓いをしている宮司さんがいます。それが照天神社宮司、金子雄貴(かねこ・ゆうき)さんです。「誰もやらないのであれば自分がやるしかない」と敢然と依頼を引き受けてきた金子さんは、その場所で無念な死を遂げた人の苦しみや悲しみに寄り添い、その魂を安らかな方向に導く役割を2005年から18年間続けています。
今回は、著書『はぐれ宮司の事故物件 お祓い事件簿 1500件超の現場を浄化!』より、金子さんの思いや、事故物件に関するエピソードを抜粋してお届けします。
 

日本で唯一の事故物件専門のお祓い宮司


照天神社宮司、金子雄貴(かねこ・ゆうき)と申します。
2005年から18年間、孤独死や自殺した人が住んでいた集合住宅など、いわゆる事故現場のお祓いを専門に奉仕をしております。今までにお祓いをした事故物件は、1500件以上になります。

事故物件のお祓いを専門におこなっている宮司は、おそらくわたしだけでしょう。日本で一人しかいないということは、孤独死や自殺といった亡くなり方をした人たちが住んでいた多くの場所が、清められることなく、そのままになっているということです。

「なぜ、事故物件という過酷な現場を専門とするのか?」

このように聞かれることが多いのですが、わたしには「社会に生きる人々に寄り添う」という神社が本来あるべき姿をまっとうしたいという強い信念があるからです。

わたし自身も、二十代の頃は職場での嫌がらせやパワハラ、うつ病などで悩んできました。さまざまな壁にぶち当たるたびに「なにくそ」という気持ちで乗り越えてきました。
そうして信念と情熱、真心の果てに、わたしが宮司を務める照天神社は、四坪の小さな敷地から始まったのです。なお、宮司とは神社の神職の代表者のことです。

「浴槽で遺体が...」事故物件専門のお祓い宮司が赤裸々に語る、忘れられない衝撃の体験_img0
※この漫画は書籍には掲載されておりません。


わたしの仕事は「心の現状復帰」


多くの人の無念な死に触れる中で、苦しみを抱えながら生きる方々にとって、わたしの生き方が少しでも励みになればという思いが生まれました。
宗教なんて、世の中の役に立たないと意味がありません。その時代に、必要とされることをやるべきだと思います。

神様がどうとか、教えがどうだとか、そういう問題ではなく、生きている人であっても死んでいる人であっても、苦しんでいる人がいるなら、わたしは宮司という立場で話を聞いてあげたい。

 

だれかにとって「背中を押せる存在」でありたいと思います。
それが、今に生きる神社、宗教のあるべき姿だと、わたしは信じています。

お祓いをすることで、事故物件を専門とする特殊清掃の方が作業をしやすくなり、「お祓い証明書」を出すことで、大家さんや不動産屋さんは安心して物件を紹介でき、次の住人が納得して住むことができるようになります。

現在にいたるまで、依頼主からのクレームは皆無です。お祓いの効果を納得してもらい、「本当にありがとうございました」と笑顔で言っていただけています。

特殊清掃の方の仕事が「部屋の現状復帰」ならば、わたしの仕事は「心の現状復帰」といえるでしょう。
 

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