夫婦をチームとして捉えはじめた妻


この投資話は、蓋を開けてみればただの割高新築の売れ残り物件をつかまされただけ。賃貸に出して利回り上々、という甘い誘い文句だったそうですが、立地も良くないため借り手もなかなかつかず、想定家賃よりも値下げしなくてはならなかったそう。

 

不動産を投資として購入する場合、自身でしっかり学び、調べれば、ランニングコストを鑑みたうえでの利回り計算、保証の手厚い契約を結ぶなどリスクヘッジをすることも可能でしょう。しかし向こうからやってくる投資の話に、智明さんのようにいい面だけを聞いて参戦するのは避けるべきでした。

 

「夫はゴルフ一筋ですから、世間知らずなところもあって、私と同じくらい投資やお金のことに疎い人。でもゴルフコーチをしていると、お金がある人たちからうまい話をきいたりして、憧れちゃったのかなと。そこに付け込んでくる人がいると私たちも学びました。

物凄く高い勉強代だと思って、もう二度とその手の話に相談ナシで乗らないで! と約束しました。周囲からは結構『甘い、またやるから離婚したほうがいいんじゃない』と言われました。でもまあ、猛烈に反省しているし、本人が一番ショックを受けていたので、うん、1回は許す。と思って水に流しました。この時、彼はまだ20代でした。年下のゴルフばかりしてきた人と結婚したのは私ですから、成長途中と思ってイエローカードとしました」

なんとも懐の大きい妻です。明莉さんの強いところは、周囲の声よりも自分の基準を優先するところだと感じました。もちろん場合によってはこの判断は諸刃の剣ですが、結婚生活に寛容性が不可欠なことも真実だと思います。

しかし沢山のご夫婦に取材をしてきて、お金の問題はときに浮気問題よりもシビアだと感じています。結婚は生活、ましてや明莉さんは2児の母になろうとしているタイミング。ゴルフスクールを設立するという明莉さんの野望も、軍資金がゼロでは遠のいてしまいます。

「もともとお金にはあまり興味がない彼がなぜ不動産投資話に乗ってしまったのか。じっくり話を聞くと、彼なりに今の個人ゴルフコーチという業態に不安を感じていて、将来安定した収入を確保したいという気持ちからでした。

そこで私は『いまだ』と思い、ゴルフスクールを法人にする計画を包み隠さず共有しました。彼の失敗から、パートナーに大きなことを秘密にしても何もいいことはないし、2人の知恵と手数を合わせたほうがいいと思って」

以前は難色を示していた智明さんですが、明莉さんが集めた資料や本、情報を読み、やってみようと賛成してくれたそう。

ようやく夫婦の歯車が噛み合ってきたかに見えましたが、難関はまだ待ち受けていました。