どうやって100歳の人がジャンプできるようになったのか

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2022年夏には、金のまりの体操の時間は1時間になっています。5年前にはじめて湧氣塾の「骨と呼吸の勇﨑メソッド」による体操を始めた時、利用者で体操を進んでやろうという人はほとんどいませんでした。

 

88歳で長く和菓子屋さんを経営してきたSさん(女性) は「もう私は死んでいくしかないんだから。なんでいまさら体操なんかやらなけりゃあいけないのよ」と言い、最初は体操への参加を拒否していました。そのSさんも私の一番弟子の森千恕(もりせんじょ・「からだの学校・湧氣塾」校長) が上手にすすめるといつの間にか体操をするようになり、それにつれてからだも元気になっていきました。

また90歳のKさん(男性) はお医者さんでしたが、周りの人と一切口を利かずにいつも暗い顔をしていました。もちろん、最初は体操に参加しませんでした。それでも、森が「一緒に体操しましょう」と誘導すると、少しずつ体操をするようになりました。後で知ったのですが、脳塞を患った後、ろれつが回らなくなり思うようにしゃべれなくなっていたのです。それが体操を始めて数ヵ月すると、進んで体操に参加するようになりました。

からだを動かすと、からだが元気になってくるのが自分でもわかります。高齢であれ、脳塞の後遺症であれ、毎日からだを上手に動かすと、段々回復していきます。からだには生きている限り自然治癒力、つまり自分でからだを治そうとする回復・改善力が備わっているのです。

半年ほどするとKさんはニコニコしながら体操をするようになり、最初は「うにゃうにゃ」というように何を言っているのかわからなかったのが、明瞭な発音で話すようになってきました。さらに驚いたことに、冗談を交えて盛んにおしゃべりをするようになりました。

こうしたからだや心の回復を引き出す方法もまた、足の指の骨を強化することがベースになっているのです。歩行困難者の高齢者がなぜ心身共に元気になるか、それは常に足の指の骨を使わせる方法だからです。

金のまりでも、他のデイサービスと同じように、利用者さんが椅子に坐って過ごす時間はかなり多いものでした。そのため、椅子に坐っている間もなるべく足を動かすように指導しています。

例えばその典型は、足のタッピングといい、床を足の裏、正確には指の付け根でトントンとたたくのです。この時大切なのは、足の裏を下に向けて打ち下ろすのではなく、むしろ足の指の骨がバネになって跳ね上がるようにタッピングするのです。音でいえばドンドンというより軽快なトントンという感じです。

足の裏の指の骨でトントンするタッピングと前述の湧氣球乗りで、足の指の骨はしっかり強化され、後は①足の指の骨、②足首の骨(距骨・ 踵骨(しょうこつ))、③膝関節の連動で、タイミングさえ合わせれば①、②、③で自然にからだが浮くような上昇エネルギーが骨・関節の連動運動によって生じ、高齢者でも少し練習すれば、一切「筋トレ」はせずに誰でもジャンプができるよう元気が回復してくるのです。