カナダで活躍したCGアーティスト、マンガ家になる!
作者の渡嘉敷拓馬先生は、本作が初の週刊誌連載ですが、かつて、隔月誌『少年マガジンR』で連載を持ったことがありました。しかし、初連載は打ち切りが決まってしまいます。連載終了まで時間的な余裕があったことから、フリーでCGの仕事もするようになりました。
「はじめはCGアーティストになりたくてCGアニメを作ったのが創作活動の始まりです、その中で漫画の方が短い時間で物語を作る事ができると気付き、マンガ家にもなりたいと思うようになりました。それからCGアーティスト→漫画家→CGアーティスト→漫画家と交互に行き来している感じですが、どちらの仕事も好きです」(渡嘉敷先生、以下同)
連載終了後、渡嘉敷先生はカナダのバンクーバーに拠点を移し、本格的にCGアーティストとして実績を積むことに。そこではハリウッド映画の有名作品にも携わりました。
「ハリウッド映画などは予算も期間も膨大で、好きなだけ3DCGの作りこみができます。そのため、自分の限界に挑戦でき、職人的な満足感はありました。 一方で分業化が進んでおり、僕が担当していたのはモデラーという3DCGの造形をする部分で、映画作りのごく一部。やがて、全ての制作に関わりたい、創造したいというフラストレーションが溜まっていき、全て自分で作ることができるマンガ家に再び戻りたいと思うようになりました。 ただ、マンガ家はマンガ家で時間がなく、職人的な作りこみが出来ずフラストレーションが溜まるので、次はCGアーティストに戻るかもしれません(笑)。どっちも満たされるのが一番いいのですが」
帰国後にマンガ家として再デビューを果たした一作目が本作。CGを駆使したキャラクター造形や戦闘シーン、筋肉や骨格などの精密さや美しさが特徴です。
「ふと作った3DCGをマンガ風にモノクロに加工してみたところ、それがいい感じに仕上がったので、これなら面白い絵のマンガが作れそうと思い、マンガ家としての手応えを感じました。海外のキャラクターデザインの特徴の一つに、解剖学的な正しさが求められるというものがあり、筋肉の修正を何度もしていくうちに、より解剖学を意識したキャラクターをデザインするようになりました。マンガの世界では、背景でのCG活用は珍しくなくなっていますが、キャラクターへのCGの導入は多くはないため、差別化のポイントとして工夫していきたいですね。また、海外で培ってきたものを日本の読者さんに向けてどんどん出していければと思っています」
ダークヒーローのバトルものということで、ミモレ読者や女性の中には、少しとっつきにくい作風と感じられる人がいるかもしれません。しかし、登場人物は男女を問わず、自分の信念のために戦っており、CGで描写された美しい骨格や筋肉など、見どころがたくさんある作品です。
「恐らくターゲット的には一番離れているかもしれません(笑)。ジャンルとしては王道バトル漫画なのでそこはブラさずにいくとして、作品を描いていくうちに、家族(血のつながりの家族、職場の仲間的な家族)や、自分たちの子孫である二世に芽生えるジレンマをに注目していることに気付きました。これは世代や性別を超えて普遍的なテーマなので、いろんな読者さんに伝わればいいなと思っています」
本作は、フランス語版での発売が予定されており、フランスの出版社が異例の初版部数を決断しました。この作品に強い魅力を感じていることの現れなのかもしれません。
「出版契約の際に、いままであまりないくらいの初版部数の提示があったそうで、僕自身かなりびっくりしました。フランスの出版社の方が何らかの可能性を感じてくれたのはとてもありがたいです。なぜこうなったのかは、僕が一番気になっています(笑)。現時点では発売前なので、フランス語圏の読者さんからの反応はまだわかりません。 ただこの期待がちゃん結果につながるよう、今はいい作品を描くのみです」
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『LILI-MEN』
渡嘉敷拓馬 講談社
人類を苗床に繁殖する種族「サキュバス」と、彼らを根絶しようとする人類。相容れない2つの種族が闘争を始めて悠久の時が流れた頃、戦いを終わらせる「王」が誕生する。王に選ばれた勝者は果たして……!?
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