推し活とごまかしてはいるけれど……


その一件をきっかけに、誠也さんが麻紀さんを見る目が厳しくなったように感じられたそうです。それでも、細心の注意を払うことで、推し活はペースダウンさせなかった麻紀さん。家事も頑張って、夕飯は自分はつまんで済ませることも多く、もともとスリムですがさらに4キロほど落ちたと言います。それさえも、近づいてきた「現場」=ライブには少しでも可愛い状態で行きたいという女心から喜んだ麻紀さん。

「推し活って、なんかいい感じに言っていますけど、私はリアコタイプ。つまり、推しの彼にリアルに恋をしたような状態なんです。精神的な浮気に近いのかも……。夫には正直、ときめきはもう感じないです。もちろん、夫として大好きだし信頼していますけども、推しを一目見たときに出る、圧倒的なキュンには到底及ばないし、推しの彼のためなら何でも頑張れる。

夫から見たら、それまでは妻がペットやゲームにハマってるみたいなものだったはずですが、ホテルの一件あたりから、狂おしいくらいの私の情熱みたいなものを感じ取り、嫉妬に似た心境がうまれてしまったのかもしれません」

 

妻が、他の男のために莫大なお金を使い、ライブのために美を磨き、自分と子どもよりも優先して休暇の時間を割いている。しかも、自分に対しては感謝も好意も見せてくれるものの、情熱や色気みたいなものの対象は「推し」。

……冷静に考えると、実態を知ってなお、これが全く気にならない配偶者は少ないのかもしれません。

やがて本気になった誠也さんがとった行動は、麻紀さんを震え上がらせるものでした。

 

夫の強権発動に、妻は!?


珍しくテレワークを取っていた誠也さん。麻紀さんがいつも通り仕事帰りに夕飯の買い物をして帰宅すると、玄関にCDが200枚以上、紐で縛られて積まれていました。

「それは推しの売上のために、新譜が出るたび、数十枚ほど買っていたアルバムでした。新品状態で同じジャケットがばーっと並びます。お金に換算すれば100万円に迫るくらい。それを黙って縛って、捨てるために玄関に出して……無駄遣いを糾弾されています、明らかに。

私は私で、絶対に触らないで! と頼んでいた推し活グッズ用のクローゼットを開けられて、勝手に持ち出されたことに自分でも制御できないくらい怒りを感じてしまって、涼しい顔をして仕事をしている彼を後ろから拳でパンチしてしまいました」