「推し活ができたのは夫がいたから」と痛感


比べるのも無意味ではありますが、実際の知人でも、入院してしまって15万円のお見舞い金を包んでいたら、まだ40代の共働き家庭、配偶者は止めるのではないでしょうか。ましてや、相手に個別の「真意」は伝わらないのですから。

この一件は結局のちに追及され、誠也さんの気持ちが離れるきっかけになってしまったと麻紀さんは語ります。

誠也さんにとって、ライブに行くなどの行動は一ファンとして静観できたのでしょう。しかし、「生誕祭」や過ぎたチップ感覚の散財は、家計を顧みずホストや浮気相手に貢ぐようなイメージを抱き、嫌悪感と嫉妬心を感じたのだと推察します。

現在は、子どもたちが高校生になる2年後を機に、離婚しようと誠也さんは主張されています。その際に、養育費は年収を鑑みて常識の範囲内であるものの、麻紀さんが現在の生活を維持するのは難しいという水準でオファーがありました。

おそらく、誠也さんなりの報復なのでしょう。

 

麻紀さんが推し活のあのレベルで楽しみながら、家庭生活と両立し、可愛い子どもたちと不自由なく暮らせていたのは、まぎれもなく夫の誠也さんの存在と収入があってこそ。そうでなければ自由に使えるお金はもっと減っていたはずですし、ライブに遠征で夜、家を空けることなどできないのです。

 

「改めて、夫がいてこその推し活であり、私の人生だったことを痛感しています。そして調子がいい話ですが、やっぱり夫のことは好きだし信頼もしていて、一緒にいるのは幸せだと感じているんです。自覚してからは、できるだけそれを表現するようにしています。……それでも、推しに対する気持ちを失くすことはできません。傍目にはくだらない思い込みだと思いますが、私にとっては憧れの人なんです……」

「執行猶予」であるこの2年の間に、なんとか夫婦関係を立て直したいという麻紀さん。

僭越ながら、きっと150万円は一般家庭において一つの趣味に集中させるにしては高額だし、少しペースダウンしてはどうかと勧めました。

「わかっているんですけれど……またツアーとアルバムが出たら、待ってましたとばかりにお金を使ってしまいそうな気がして、悩んでいます」

2年後、もう一度お話を伺う約束をして、取材は終了となりました。麻紀さんは、とても人間味がありチャーミングな方で、ご夫婦の先行きにはまだ課題が山積みであり、その原因はやはり麻紀さんだろうとわかっていても、人一倍家事育児も頑張ってきた彼女を応援したいような複雑な気持ちになりました。

麻紀さんが自分の情熱と生活のバランス、落としどころをうまく見つけられ、ご夫婦の関係が良くなることを心から祈っています。

写真/Shutterstock
取材・文/佐野倫子
構成/山本理沙
 

 

 

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