もしも、愛する人の記憶が消えてしまうとしたら、自分はなにをしてあげられるだろう。記憶喪失を題材とした物語を観るたびに、そんなことを考えさせられます。12月17日に最終回を迎える『たとえあなたを忘れても』(ABCテレビ・テレビ朝日系)も、とある事故がきっかけで記憶障害を抱える青木空(萩原利久)と、河野美璃(堀田真由)が織りなす恋の物語。切なくも美しい本作の魅力を、改めて振り返りながら最終回の展開を予想していきたいと思います。

『たとえあなたを忘れても』(ABCテレビ・テレビ朝日系/最終回は12月17日(日)22時30分〜)

『今夜、世界からこの恋が消えても』(2022年/以下『セカコイ』)や『50回目のファーストキス』(2018年)など、記憶障害のなかでも前向性健忘を題材とした物語は数多く存在します。両作のヒロインは、前向性健忘を患っているため、眠っている間に記憶がリセットされてしまう。そのため、どんなに好きになれる相手に出会えたとしても、翌日には恋心がどこかに消えてしまうんです。『セカコイ』の透(道枝駿佑)も『50回目のファーストキス』の大輔(山田孝之)も、彼女と一緒にいる時間をとにかく楽しいものにするために努力を重ねていました(『セカコイ』に関してはまたどんでん返しがあるのですが……)。

 


ただ、『たとえあなたを忘れても』の空の場合は、いつまた記憶を失ってしまうのかが分からないのがむずかしい。18歳のときから、記憶障害を繰り返している空。美璃と出会って恋をしてから記憶がリセットされたこともあります。もちろん、いちばんしんどいのは空だと分かってはいるけれど、一度愛し合った相手に「誰ですか?」と冷たい目で見られる美璃の気持ちを想像すると、胸がギュッと締め付けられます。

いつ記憶を失ってしまうのか、それともこのままなにもなく過ごしていけるのか。空とともに生きていくためには、綱渡りのような生活を続けていかなければならないということ。第8話、「空がわたしを忘れても、わたしは空を忘れない。わたしはずっと空のそばにいるから」と宣言した美璃ですが、ラストではなにやら不穏な空気が流れていました。