死なないために婚活した引きこもり女子。誰かに頼って生きていくことを否定しないで。

「結婚とは自立した者同士がするもの」若い世代の間でもそんな認識が高まっているようですが、この作品の主人公のように引きこもりで無職の20代女性の場合にはどうしたらいいのでしょうか。社会とつながるために結婚をしようと決めた引きこもりの女子が主人公の『ウツ婚！！　死にたい私が生き延びるための婚活』の2巻が1月10日に発売されました。

2010年、石田月美・27歳はうつ病と摂食障害、対人恐怖症を患って引きこもりの生活を送っていました。自分の醜い姿を見て、希死念慮が高まった彼女は精神科の主治医に「死にたい」と相談すると「結婚すれば？」とアドバイスを受けます。そこから彼女は、「生きるための結婚」をすべく、婚活をはじめることに。

しかし、それまでずっと引きこもっていたのに男性とうまくコミュニケーションできるわけもなく、合コンや婚活パーティに向かうも、自分の話ができなくて撃沈したと思えば、ジムや街で見かけた好みの男性にやたらと積極的にアプローチして引かれたり、騙されたりと散々な目に。

本作はそんな彼女が「自立した結婚」をするまでの軌跡です。

「闇堕ち」しないためのテクニックでトライアンドエラー

婚活パーティなどで男性と対峙するとフラッシュバックが起きたり、自己否定の闇に堕ちてしまう月美。でも、彼女は自分の「闇堕ち」状態と向き合うためのテクニックを使って、必死にトライアンドエラーを繰り返します。 

彼女は「体を締め付けない服装」のほかにも、自分なりの気分を落ち着かせる方法をたくさん持っていて、都度都度実践しています。その努力は外から見えることはなく、何も知らない男性から心無い言葉を投げかけられることも。

挫けそうになっても婚活をし続けるこの行動力はすごいし偉い！
ですが⋯⋯。

どうしても大きな失敗をすると、過食→リバウンドのループにはまってしまう様子。彼女はどうしてそこから抜け出せないのでしょうか？
原因は彼女の心の奥底にありました。
 

婚活でやりがちなNG行動。根底にあるものとは？

「自分の話ができない人」はダメだと相手の反応で知る月美。とはいっても、「知り合いの話ばかりする人」もダメ。”合コンさしすせそ”のように「相手に合わせすぎる人」もダメ⋯⋯。うつ病どうこうというよりも、彼女が陥っていたのは、婚活でやりがちなNG行動の数々。それらに共通するものとは「周りから認められたい」という承認欲求でした。
「自分がどう見られているか」ばかり考えて、相手のことを考えていない。これって男女問わず、厄介なものだと思います。

これまで出会ってきた男性に対し「誰一人私の内面を見てくれなかった」と嘆く彼女を本当に救ったのは、テクニックではなかったのです。
 

一人で頑張らず、誰かに頼ってもいいと思えること

彼女を掬い上げてくれたのは「人」でした。思えば、主治医が婚活をすすめたのも、別にいい加減なアドバイスではなく、人と交流することで、引きこもりから社会に少しずつ戻っていってほしいという願いがあったのではないでしょうか。1話の冒頭で現在の月美自身が「結婚バンザイとは思っていません」と語っているのですが、その通りで、本作はこうして私は婚活を成功させたよ、という話ではないんですよ。

本作のテーマは「誰かに頼って生きていくことを否定しないで」なのだと思います。本作のラストを読んで、金八先生の「人という字は、人と人とが支え合っている」を思い出しました。ネットですぐに何でも解決できて、一人でも生きていける今の時代だからこそ、なんとしてでも「自立」せねばと意気込むだけでなく、思い切って泣き言を言って人に頼ることは、世界を思いがけない方向に開いてくれるのかもしれません。

『ウツ婚！！　死にたい私が生き延びるための婚活』第１〜２話まるまる試し読み！
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