「いいじゃんいいじゃん」と褒めるのに人事評価を下げる管理職

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——そういった不安が高まっているのに、教育機会が減って、フィードバックもなく、成長実感を得られない「ゆるい職場」だからこそ、若者が辞めてしまうわけですよね。

古屋:実際、若者の声でこんな例がありました。自分の作った資料を上司に見せると、上司はいつも褒めてくれる。だけど、お客さまのもとでプレゼンした資料は、自分が作った資料とは全く似ても似つかないものになっていたと。そんなことが何度か起こり、だんだん自分が、「お客さまには通用しないんだな」と悟っていく。そんな状況なのに上司は褒め続けてくれる。そりゃあ、不安にもなりますよね。

——向き合ってくれるとか、フィードバックしてくれる機会がないことが問題ですね。よく、「社会の風潮として叱ることが許されなくなった」「声をかければハラスメントと言われる」「だからもう何も言えなくなった」って聞きますけど、いや、「教えてないじゃん」っていう話で。別に叱らなくても、ハラスメントにならないように「教える」ことはいくらでもできるはずなのに、「叱れなくなったから」を言い訳にしている感じがします。

古屋:部下を褒める上司は圧倒的に多いのに、適切なフィードバックをする上司や先輩は限定的です。今、管理職には、「フィードバックを一切せずに、人事評価だけ下げる」という手法をとっている方がいらっしゃるんですよ。

育成に手間をかけるよりも、全部自分でやっちゃう。もしくは自分の部下のデキる人にやらせて、若者には「いいじゃんいいじゃん」と言って、ハラスメントにだけは配慮して、若者の評価だけを下げていくと。そう話していた方もいらっしゃいましたね。

 


会社はもう「育ててくれる場所ではない」かもしれない

——残酷ですね。

古屋:でも、別にマネージャーが悪いわけじゃない。今の「ゆるい職場」という環境、仕組み、システムが、そういうマネージャーのアクションを促している。だから僕はやっぱり、職場だけで若手を育てるのは、限界じゃないかなと思うんです

この現状から読み取れる、若者に対しての一つのとても重要なメッセージは、会社はもう「育ててくれる場所ではない」ということなんです。口を開けて待っているだけでは、成長機会は得られないかもしれない。そんなことが暗示されている。

この話をすると少し上の世代の方々は、「いや、成長機会なんてもんは取りに行って当たり前なんだ」みたいなことを言い出すんですけど、それは違っていて。昔は、口を開けて待っていれば色んな経験を積めたんです。長時間残業で古い、きつい労働環境ではあったけれど、上司や先輩がビシバシいろんなこと言ってきて、自ら求めなくても会社が育ててくれた。上の世代はそこを理解するべきです。