【親野智可等さんインタビュー】良い結果をもたらすのは「民主的な親子関係」

 

──叱ることをしない良好な親子関係が子どもの非行を止めるという記述には目からウロコが落ちました。昭和育ちの私などは、親の厳しさや怖さこそが非行の抑止力だと思っていたのですが、実はそうではなかったのですね。

この30年間で子育てや親子関係の常識は大きく変わりました。その背景には、発達心理学や教育心理学、脳科学などの発達があります。子どもを一方的に叱っても成長にはつながらないことが科学的に証明され、その事実がテレビや新聞、ネットといったメディアで拡散されたことで社会全体の意識が変化したのだと思います。昭和の親子関係は上下関係でしたが、令和の現在は民主的な関係へと変わりつつありありますね。

──親野さんはこれまで多くの親子関係を見聞きしてきたと思いますが、令和の子育て世代は昭和時代とは異なっているという実感はありますか?

家庭によって差はありますが、現代の子育て中の親たちを見ていると、全体的に民主的であろうという意識が強いのかなと感じますし、「子育てはこうじゃなきゃダメ」という頑固な人も減ってきたように思います。また、最近の子どもには屈託なく素直なイメージがありますが、それは民主的な親子関係のもとで伸び伸びと育っているからかもしれないですね。

──反抗期の子どもを持つ親の中では、「非行に走ってほしくない」と並んで「ひねくれずに勉強して学力を上げてほしい」という願いも強いと思います。その気持ちが高まってつい子どもに厳しくしてしまう親もいると思いますが、それはいけないことでしょうか?

実は、民主的な親子関係の中で自己肯定感を高めた方が勉強の能率が上がることが科学的に分かっています。それは仕事も同様で、社員の幸福感が高い方が業績は伸びるそうで、幸福感の向上を優先する企業が増えてきました。勉強に関しては、親子ともどもエンジョイすることが大事。その幸福な環境のもとで自己肯定感を高めた子どもの方が学力は伸びるでしょう。というのも、自己肯定感が低く、メンタルが安定していないと勉強に集中できないからです。集中できる環境を作るためには、やはり民主的な親子関係が必要だと思います。

 


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部屋のドアに「立入禁止」の張り紙。親を拒絶する反抗期の子どもには、どう接するのがベスト?>>


著者プロフィール
親野 智可等(おやの ちから)さん

教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。人気マンガ『ドラゴン桜』の指南役としても著名。Twitter、Instagram、YouTube、Blog、メールマガジンなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。
ホームページ:https://www.oyaryoku.jp
Twitter:@oyanochikara
Instagram:@oyanochikara

 

 

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写真:Shutterstock
取材・文・構成/さくま健太