原稿執筆①
10万字を書き切るまでの戦いは、編集者が「命綱」

写真:Shutterstock

企画会議が通れば、あとはひたすら書くだけ。ここから孤独な戦いが始まります。

単発の記事であれば、2000~3000字を書いて、公開して、いろんなコメントが付くのに対して、本はおよそ10万字(本によって大きく前後します)を書き切るまで、編集者以外からの反応がありません。1冊目のときは1章分(2~3万字)を書き上げるごとに編集者に提出し、フィードバックをもらっていました。そこでのコメントが自分以外からもらえる唯一の反応。

 

もちろん、自分でも書いていて多少手応えがあったり、逆に自信がなかったりというのはあります。でも、本当にこれで大丈夫なのかは常に不安なところ。これ本当に文章として成り立ってる? マジでこれで大丈夫っすか? ってかこれ本当に面白いの? こんな文章でお金出してもらえるんでしょうか(半泣き)。うわああああああ。

こんな感じで、自信がなさすぎて一人で悶々として、ドツボにはまっていくんですよね。お金を払って買ってもらうクオリティに達しているのかとか、あらゆることが不安で、疑心暗鬼になっていきます。卒論で書いた2万字が人生で一番たくさん書いた経験だったのですが、本ではその5倍は書かないといけません。編集者から褒められると、こ、こここれで大丈夫なんだぁ!!!! と思えて、また書こうと思えたりする。著者にとっては編集者の言葉が命綱みたいなものです。

1冊目を書いていたときは、フルタイムで働く傍ら執筆をしていたので、仕事が終わって家に帰ってからの時間、休日を使って1ヵ月2~3万字を書いていました。その頃には連載を持っていたので、連載の記事も書きながらの同時進行です。体力がないので、時間を捻出することが一番の課題でした。どうしたかというと、とにかく速く書く(笑)! もう、それしかありませんでした。

幸い、書くことが見つからないとか、書けなくなる、みたいなことはありませんでした。泉のように書きたいことが頭の中に湧き続け、ひたすらそれを書き起こしていきました。専業作家の人だと、1ヵ月で1冊を書き上げてしまう人もいるそうですが、私は半年ほどかけて原稿を書き上げました。最終的には10万字くらいでしたが、容赦なく削ったり編集者に削られる部分もあったので、トータルで12万字以上は書きました。

原稿執筆②
書き下ろしと、連載ものの違いは?

1冊目(写真左)のエッセイ『死にそうだけど生きてます』は書き下ろし。2冊目(写真右)の『死ねない理由』は、WEB連載に加筆修正を加えたものです。

2冊目のときは、既に書き溜めた連載があったので、そこに加筆修正を加え、1章分を書き下ろしました。2年前に書いた自分の文章を読み返すと、よくこんなことが書けたな、と関心することもあれば、今と感じていることが全然違ったり、若さを感じて恥ずかしくなることもあります。自分の成長を感じる時間でもあります。あまりに書いた当時から心境が変化し、今の自分との乖離が激しい場合は、表現を修正したりします。

本だけでしか読めないことを書いて、読者さんに届くように、書き下ろし部分は、一から原稿を書きます。私は普段主にWEBで記事を書いていますが、WEBは拡散力がある分、コメントで傷つくことを書かれたりすることも多いです。長くなるので何があったかは端折りますが、生活に支障が出るほどダメージを受けることもありました。もちろん、何かを世に送り出すと、あらゆる反応が返ってくることは避けられないので、仕方ないことではあります。でも、やはり同じ文章を公開するということでも、WEBと紙では反応が全然違います。これはライターを始めて驚いたことの一つです。

WEBで文章を書く中で、あまりにいろんな経験をし過ぎたこともあり、センシティブすぎることは紙で書きたいと思い(と言ってもWEBでも結構書いちゃってますが)、ここぞとばかりに 、いつか本で書こうと思って溜めていた思いを本の原稿で書きなぐりました。そのせいか、本を読んだ人たちからは「書き下ろし部分だけ明らかに波動が違った」「書き下ろし部分が特に響いた」と言われました。溜まりに溜まった感情を爆発させたので、それが文章に出たのかもしれません。