米倉涼子さんが見た、最新のおすすめエンタメ情報をお届けします。
今、話題を呼んでいる『ジョーカー』の続編『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』を観てきました。
コメディアン志望のアーサーが“ジョーカー”になっていく前作はホラーに近いサスペンスのような作品でしたが、今回はラブストーリーや法廷劇、アニメーションなど様々な要素が入ったエンターテイメント性の高い作品になっています。
前作から2年後、アーサーは殺人罪に問われ、州立病院に収監されています。
弁護士は多重人格を理由に責任能力がないと主張。そんななかでアーサーは謎めいた女性、リーと出逢います。
ふたりは惹かれ合いますが、彼女が愛しているのは“ジョーカー”なのか、それともアーサーなのか……。
アーサーが希望を抱くようなシーンで安心させておきながら、そのあとで崖に突き落とされるシーンが続くというスリル感たっぷりの作り。
アーサーがリーと幸せに過ごす妄想はミュージカルのようなパートになっていて、映画『シカゴ』を思い出させるスタイルです。
救いのない人生を送ってきたアーサーにとって、一瞬でも夢を見られる相手であり、自信と勇気を持たせてくれる存在であるリー。
夜景をバックにしたふたりのダンスが美しければ美しいほど、その後の展開が切なく感じられました。
アメリカの刑務所や看守の理不尽さ、今とは違うニューヨークの雰囲気などいくつもの見どころがある作品ですが、私が一番驚いたのは、アーサーを演じるホアキン・フェニックスの身体能力!
骨ばった背中、浮き彫りになる肩甲骨、バランスの崩れた姿勢が映し出された瞬間、フィジカル面でのアプローチに圧倒させられました。
タップダンスを踊り、歌い、街を走ったり、思いもよらない体勢で倒れたり……。
スクリーンに映し出される彼の動きから目を離せなくなります。ジョーカーのメイクはこんな風にしてできあがっていくのね、という発見も。
謎の女性、リーを演じているのはレディ・ガガ。アーサーと病院で出会い、タバコを吸いながら会話をするシーンはナチュラルな雰囲気。
でもいざ歌いだすと、そこにいるのはやっぱりレディ・ガガ! まるで彼女のステージに見えるような華やかな存在感ですが、アーサーにとってのリーはそれほど特別な人だったということなのかもしれません。
世間に祭り上げられ、民衆を熱狂させたジョーカー。
そのイメージに苦悩しているアーサーの物語のようにも見える『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』。
私はアーサーのことをとてもかわいそうな人だと思いましたが、ラストまで見届けるとまた違う物語が広がっているような印象も受けました。
この続編が何を伝えようとしているのか、ぜひ映画館で確かめてみてください。
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』
コメディアンを夢見る孤独だが純粋で心優しい男アーサー・フレックは「笑いのある人生は素晴らしい」と信じ、緊張したり感情が高ぶると発作的に笑い出してしまう病気を抱えながら都会の片隅でピエロに扮した大道芸人をしながらドン底から抜け出そうともがいていた。しかし理不尽な社会に押しつぶされた彼はある日、酔っ払いに暴行を受け反撃のはずみで人を殺してしまう。理不尽な社会への反発のトリガーを思わぬきっかけで引いたアーサーは瞬く間に様子を一変。貧困層を中心に彼を“格差社会を破壊する救世主”であるかのごとく崇めるムーブメントが広がり、彼はやがて“悪のカリスマ”ジョーカーへと変貌を遂げていく。大ヒット上映中。
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文/細谷美香
構成/片岡千晶(編集部)
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