今回紹介する『海月姫』は、2010年に講談社漫画賞を受賞し、2014年には実写映画化、2018年にはテレビドラマ化もされた東村アキコ先生の代表作ともいえる人気の高い作品です。この夏、テレビドラマ化される『偽装不倫』ではこじれ女子が描かれていますが、こちらもさらにこじれまくっている女子が見ものです。
舞台はクラゲオタク、鉄道オタク、三国志オタク、和物オタク、枯れ専といったオタク女子集団「尼(あま)〜ず」たちが共同生活をする男子禁制の天水館。オタク女子に「尼〜ず」って……なんて素敵なネーミング(笑)。(このあたりが東村先生の女性のカテゴライズ分け最高です!)このオタク女子の巣窟である天水館に、女装をした超お金持ちでイケメンな、リア充男子代表みたいな蔵之介が関わってきます。オタク女子とイケメン男子って、言ってみれば油と水でしょうか。普通なら出会うはずもないイケメン女装男子との出会いが起爆剤のようになって、主人公である月海の世界が大きく開いていきます。
私のことでいえば、20代から30代前半まで女性雑誌編集部の編集者として、女性9割の職場で日々働いていました。女性雑誌の編集部って、なんだか華やかな気がしませんか? いえいえ、そんなことはないんです。対外的に華やかなイメージを演出しているだけで、実は好きなことに没頭するオタク女子の集団なんです。ちなみに、川良新編集長も同じ編集部のオタク女子仲間でした(笑)
思い出はさておき、オタク女子に共通の自分に興味のあることにしか興味がなくキラキラとした世界から隔離されているって、昔の自分はもちろん、今の自分もあてはまるなって思います。女性って、概ね同じ境遇や同じ価値観の友だちと群れていることが多いものです。違う価値観の人を受け入れる度量もなくて、違う価値観を排除するような。けれど、自分には自分なりの価値がある、その上で新しい価値観を受け入れたら、グンと成長できるんだなーって尼〜ずたちから教えられました。とはいえ、この漫画はあくまで東村先生が得意としたラブコメディ! あまり難しいことを考えなくても、センスたっぷりの東村ワールドに入り込んでしまいます。
ネタバレにもなりますが、私がグサッときたフレーズを紹介。
「あいつらは どんなに高い服でも流行が変わったら 捨てちまうのさ
ってことはつまり すぐに捨てしまうってことは結局 あいつらは
ゴミを着ているのと一緒ってことさ」
コミカル内容の中に、今を生きる私たちへのシュールなメッセージが隠されている『海月姫』。東村先生の代表作であるオタク女子版シンデレラをモヤモヤしているミモレ読者の方々!!この機会にぜひご一読を。
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『海月姫(1) 』(KC KISS)
著者 東村 アキコ 講談社
史上初(?)の「本格オタク女子漫画」!クラゲ大好きの女の子・倉下月海が暮らすアパートは男子禁制・オタク女子オンリーの天水館。ある日、月海が溺愛するクラゲ・クララのピンチを救ってくれたおしゃれ女子を部屋に泊めたら……!? オタク女子軍団「尼~ず」も人気爆発中!
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