私は仕事柄、全国で講演をさせていただいています。主催者は役所や医師会が多いのですが、最近はそこに保健所も加わってきています。恐らく高齢者にまつわる相談が増えてきて、何か手を打たなければと、さまざまな機関が連携して動き始めている行政も多いのではないかと感じます。インターネットを見れば多くの情報を入手できますが、人に直接手を差し伸べられるのは人しかいません。その中心的役割を担っているのが、役所や保健所などの公的機関だと私は思うのです。
ですから私たちも、行政のそういった機関をいわば“育てていく”必要があると思います。様々な相談をすることで行政は地域の現状をより詳しく把握できますし、対応策も探っていくでしょう。医療や福祉については、実際の対応は地域単位で行われますから、地域のごく少数の専門家が動き出すことで、大きく変わっていくことも少なくありません。ですから臆さずに相談していただきたい。何より私たちは税金を払っているのですから、堂々と行政の手を借りて良いのですよ!
とは言いましても、モンスター住民になってはいけません。「私の願いを聞いて!」という聞き方ではなく、「相談」という大人の聞き方をなさってくださいね。
またマグカップさんのご両親は遠方に住まわれているとのことですが、できる限り話を聞いてあげてほしいと思います。たとえば電話とか、ご両親がメールを使っているのなら、そういった方法でお話を聞くのもありかと思います。ご両親が二人だけの閉じた関係になってしまわないように、そこは何か方法を見つけて、子であるマグカップさんが家庭の外へ通じる窓口になってさしあげてほしいと思います。
ついでにと言っては何ですが、マグカップさんに夫がいる場合は、この機会に、それとなく巻き込んでみることをお勧めいたします。「介護は自分には関係ない」と思っている男性はまだまだ多いですが、そうではなく、みんなでできることを分担し合うことが当たり前になると良いと思うのです。そうすると、マグカップさんご夫婦の将来も変わってくる。今経験しておけば、いざというとき、夫もどう動けばいいか分かってくると思いますから。ただし夫を巻き込むとき、「助け合いましょう」と言うと男性は「なぜ自分が?」と抵抗を覚えることもあるので、「(私たちの家庭に何かあった場合の)リスク分散のために」など、相手の性格に合わせた言い方をなさったほうが良いと思います。言っていることは同じ意味でも、ここは一つ知恵を絞って (笑)。家庭の問題も“課題”と捉えて、解決法をともに探ろう、という雰囲気作りをするのもいいと思います。
・父を亡くしたトラウマから恋愛や結婚が怖くなってしまいました【30代女性】
・「コップ洗ってない」入院した夫の心ない言葉にその時、私の何かが切れた
・父と夫を亡くし、最近生きることに疲れを感じます【40代女性の相談】
・パワハラが不妊治療に影響…注意されても直らないダメ上司を見返すには
・周囲は子育て真っ最中、旧友との会話にズレ…「子なし女性」が感じる孤独とは
- 金子稚子(かねこわかこ)1967年生まれ。終活ジャーナリスト。終活ナビゲーター。一般社団法人日本医療コーディネーター協会顧問。雑誌、書籍の編集者、広告制作ディレクターの経験を生かし、死の前後に関わるあらゆる情報提供やサポートをおこなう「ライフ・ターミナル・ネットワーク」という活動を創設、代表を務めている。また、医療関係や宗教関係、葬儀関係、生命保険などの各種団体・企業や一般向けにも研修や講演活動もおこなっている。2012年に他界した流通ジャーナリストの金子哲雄氏の妻であり、著書に『金子哲雄の妻の生き方~夫を看取った500日』(小学館文庫)、『死後のプロデュース』(PHP新書)、『アクティブ・エンディング 大人の「終活」新作法』(河出書房新社)など。編集・執筆協力に『大人のおしゃれ手帖特別編集 親の看取り』(宝島社)がある。 この人の回答一覧を見る
- 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
- 1
- 2
終活ジャーナリスト 金子稚子さんの回答一覧はこちら>>