そのうえでアドバイスをさせていただきますと、おっしゃっている通りカウンセリングを試されても良いと思いますし、また自助グループに参加されるのも良いかと思います。大事なのは誰かに思いを話すなどして、自分の中だけに閉じ込めないことだと思うのです。
実は私も夫を亡くして6年半が経ちますが、いまだにグリーフの症状が突然出てくることがあります。先日も突然出てしまったのですが、そうなるともう自分を全くコントロールできない。起き上がることすらできなくなってしまいました。ただ私はこのような仕事をしているため、自分の状態に対する知識があり、そういったときに相談できる医療機関とのコネクションもあります。ですからいたずらに不安になることはなく、落ち着いて自分の回復を待つことができました。カウンセリングなどを利用すると、そのように自分の状態を客観的に把握できますし、知識も増えますので良いのではないかと思います。
もう一つ、自助グループですが、これは死別体験をした人たち同士で自分の体験を語り合うなどしながら、前に進む力を取り戻していこうというものです。ただ大事なのは、自分の気持ちを理解してくれるはずだ、と思わないことです。それを求めるとたぶん苦しくなってしまうでしょう。私は仕事柄、死別の体験をした方の話をお聞きすることも多いですが、「気持ちが分かる」とは言えない、といつも思っています。その人の苦しみは、その人にしかわからないからです。ですが、理解はしてもらえなくても、必ず差し伸べられる手はあります。その手に気づけるようなオープンマインドになってほしいと思うのです。
このような方法で、電話番さんは、自分を苦しめているものの正体をまずは見極めることが必要だと思います。大切な人がいなくなるという経験をしたから、恋愛や結婚といった、誰かと大切な関係を結ぶことが怖いのかもしれません。
実は私も同じ気持ちなのですよ。誰かと深く思いを通わせられる関係を再び築きたいけれども、その人をまた失うかもしれないと思うとものすごく怖い……。そこで、配偶者と死別しても再婚したり恋をしたりしている方たちのお気持ちを伺ってみたところ、彼女たちの中には「先のことより今この瞬間に向き合っていたい」とおっしゃる方もいました。そういった他の方の気持ちに触れるのも、電話番さんには良いかもしれないと思いました。
大切な人を喪って「この世の終わり」というような心理状態に陥っていた人の中にも、大事にしたいものが見つかってイキイキと生きていく方もたくさんいます。私がお話させていただいたことが、電話番さんの何かのきっかけになれば、嬉しく思います。
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- 金子稚子(かねこわかこ)1967年生まれ。終活ジャーナリスト。終活ナビゲーター。一般社団法人日本医療コーディネーター協会顧問。雑誌、書籍の編集者、広告制作ディレクターの経験を生かし、死の前後に関わるあらゆる情報提供やサポートをおこなう「ライフ・ターミナル・ネットワーク」という活動を創設、代表を務めている。また、医療関係や宗教関係、葬儀関係、生命保険などの各種団体・企業や一般向けにも研修や講演活動もおこなっている。2012年に他界した流通ジャーナリストの金子哲雄氏の妻であり、著書に『金子哲雄の妻の生き方~夫を看取った500日』(小学館文庫)、『死後のプロデュース』(PHP新書)、『アクティブ・エンディング 大人の「終活」新作法』(河出書房新社)など。編集・執筆協力に『大人のおしゃれ手帖特別編集 親の看取り』(宝島社)がある。 この人の回答一覧を見る
- 山本 奈緒子1972年生まれ。6年間の会社員生活を経て、フリーライターに。『FRaU』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。 この人の回答一覧を見る
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