今回紹介するマンガは深谷かほる先生の『夜廻り猫』です。遠藤平蔵という名の野良猫が、夜な夜な「涙の匂い」のする場所へ。その渦中にいる人間や猫のもとに訪れ、ときに話を聞いて寄り添い、ときに温かく事の顛末を見守ります。

小説『吾輩は猫である』(夏目漱石)や絵本『百万回生きたねこ』(佐野洋子)、そして『不思議の国のアリス』(ルイス・キャロル)のチシャ猫のように、物語に登場する猫たちは、私たちを俯瞰で見つめ、どこか達観している案内人を担うことが多い気がします。

 

漫画『夜廻り猫』に登場する遠藤平蔵もその一匹。「涙の匂い」をかぎとり、その先にいる人間(ときに猫や犬)に問いかけます。

「泣く子はいねが?」

「は?泣いてないし」と冷たくあしらわれることもあれば、どう見ても楽しそうなシチュエーションを訪ねることも。そこで平蔵は言います。

「心で泣いておるな」

「笑えぬ日々に」では、離婚したばかりの子持ちの女性が眉間にシワを寄せてクリスマスに苦言を呈しています。そこで平蔵は側で眠る彼女の娘が書いたサンタクロースへの手紙を渡します。

そこに書かれた子どもの「ほしいもの」とは—

笑えぬときは「にっこり」と言って。『夜廻り猫』に母親たちが涙する_img1

「赤の他人」では、とある結婚式の涙の匂いに誘われた平蔵。ウェディングドレス姿の新婦が少し特殊な関係だった両親へ宛てた手紙を読んでいました。

笑えぬときは「にっこり」と言って。『夜廻り猫』に母親たちが涙する_img2

たった8コマなのに一気になんて読めません。傷つく言葉は日本一優しい言葉にもなるんです。

一瞬で読み終わるショートストーリーには現代に生きる人たちの弱さや寂しさ、温かさや愛がギュッとつまっています。
 

まずは深谷かほる先生がミモレ読者のために選んでくれた、無料公開の物語をどうぞ。

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『夜廻り猫』

著者  深谷 かほる 講談社

ある夜、Twitterから生まれた8コマ漫画「夜廻り猫」。涙の匂いをたどって心に寄り添うためにやってくる夜廻り猫こと遠藤平蔵。傷つき涙する者を励ますために毎夜、現れる。そんな平蔵と共に夜廻りをする子猫と陰から見守る片目の猫・ニイ、飼い主を振り回すワガママな猫・モネなど個性豊かなキャラクターが勢ぞろい!!

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