東原亜希さん、37歳。
ときには、女性誌であこがれのスタイルを体現するモデルであり、
ときには、お茶の間にハッピーな笑顔を届けるタレントであり、
ときには、アパレルや食品など数々の商品をプロデュースする実業家。
そして家に帰れば、日本を代表する柔道家・井上康生さんの妻であり、4人の子どものお母さん。
10代の頃から「早く結婚して専業主婦になりたかった」と語る東原さんは、宣言通り25歳で結婚。そのまま専業主婦になるかと思いきや、今は仕事を続けながら4人のお子さんを育てるパワフルなお母さんです。
東原亜希(ひがしはら・あき)
1982年生まれ、神奈川県・横須賀市出身。モデル、タレント。そのほか、個人として株式会社Motherを設立し、ママ目線でアパレルやスキンケア、食品など様々な商品のプロデュースを行う。私生活では2008年に柔道家の井上康生さんと結婚、翌年イギリスに留学し、第1子の女の子を出産。さらにその翌年第2子の男の子、さらに2015年には女の子の双子を出産し、4児のママとして子育てに奮闘中。
そんな東原さんが、ユニークな本を出版します。
4月10日にリリースする書籍『life is good - 東原亜希の幸せな家族をつくる日々 -』。「ドキュメンタリースタイルブック」と称し、東原さんファミリー(井上家)に1年密着し、家族のありのままの姿を追っています。
内容は、家族の風景、インテリア、キッチングッズ、食卓の風景、市場で買い物をする姿、子どもの習い事、ご近所さんとのご飯会、お気に入りのファッションアイテムなど盛りだくさんの写真とともに、結婚に至るまでの話や子育てのことについてのインタビューも掲載。写真集とエッセイがミックスしたようなボリュームたっぷりの一冊になっています。
東原さんも今回の本では、ヘアメイクなし、スタイリストなし、グッズの撮影もすべて家の中にあるアイテムを駆使して行なうなど、手作りで作り上げていったんだとか。
情報の流れがどんどん速くなっている今の時代からすると、ありえない作り方ともいえるこの本はどのようないきさつで生まれたのでしょうか。
インタビューを前編・後編の2回にわたってお届けします。
お母さんたちのためにも「どこかで見たことある写真」は使いたくなかった
「最初、ファッションブックを出版しませんか?というオファーをいくつかいただいていたんです。でも私も37歳になって、今はもうそんなに物欲もないし、何度か断捨離を経て、身のまわりにはずっと大切にしていきたいものしか残ってない。だから、毎日毎日違う服を着て『今日はこんなコーディネートです』といって出すのは、今の自分にはしっくり来なかったんです」
たくさんの物を買い、きらびやかな世界を演出するファッションの世界。しかし、それは何年か経って見たときに必ず「古いもの」に変わってしまいます。東原さんは、年齢を重ね、そういう表現が自分に合わなくなってきているのを感じたそうです。
「そんなときに、親しい編集の方から『ドキュメンタリーのような』スタイルブックを作ってみない?とお話をいただきました。発売日を決めずに1年かけて写真を撮って、いい写真が1冊分溜まったら出版しましょう、と言っていただいて。そういう本の作り方は初めてだし、やってみたいと思いました」
締め切りに追われることなく、納得できたものありきで作る本。また、東原さんがこれならやってみたいと素直に思えたのは、インスタグラムなどのSNSと明らかに違う表現ができるのではないかと思ったことも大きかったそう。
「今って、何でも撮ったそばからアップできてしまう世の中ですよね。だからあえて『時間をかけて作る』価値があると思ったんです。あとは、SNSだとどうしても、いいところだけを見せようとしちゃうじゃないですか。だから、そうじゃないことがしたかったんです」
撮影の舞台裏はインスタで投稿。1年という長い制作期間にフォロワーの方からも「まだ作ってるんですか!?」と驚かれたそう
今の時代は、SNSでアップした写真を使って再編集して作る総集編のような本も多く、ブログやインスタグラムを積極的に更新し続けている東原さんであればそうやって本を作ることもできたはず。それを伝えると、「それだけは絶対にやりたくないと思っていた」と強い意思。そこには、子どもを育てる母ならではの考え方がありました。
「お母さんが自分のために使うお金って本当に限られているんです。何かあれば子どものために使おうと思ってしまうから。だけど、その限られたお金の中で私の本を買ってくれるなら、絶対に損をさせたくない。お金を払ってもらう以上、見たことのある写真は使わないと決めていました」
商品に対する真摯な姿勢は「自分が会社を経営しているからかも」と笑う東原さん。実際に、本作りの現場はどのように進んでいったのでしょうか。
旦那さんやお母さん、ご近所さんまで登場。「NGなし」の制作現場
ここからは、出版前のゲラ(印刷前の原稿)を見ながらお話を聞いていくことに。本の撮影は、定期的にカメラマンさんが家にやってきて、家族の中に溶け込みながら行なったそうです。
「本当に全部日常なんです。カメラマンさんには、しょっちゅう来てもらったので子ども達もまったく人見知りしなかったですね。わたしも普段の撮影とは違って、ヘアメイクなし、スタイリストなし、紹介している物もすべて実際に使っているものばかりです」
1年の撮影期間を経て、撮り溜まった膨大な数の写真たち。セレクトは、すべて編集さんとカメラマンさんにおまかせしたそう。その理由は、「すべて日常風景だから、何がいいのか客観的に選べなかった」から。写真セレクトをおまかせする代わりに、選んでもらった写真はすべてNGなしで進めました。
東原さんのモデルという仕事は、完璧な姿を見せる仕事。日常をさらけ出し、さらにそこにNOを言わないというのは、相当な覚悟が必要になりそうですが、そこに抵抗はなかったのでしょうか。
「20代だったら完璧な自分だけを見せたかったと思います。でも子どもが4人になって、自分ひとりじゃどうしようもなくなって、まわりに頼ることが増えたんですね。人に甘えてもいいんだと思った瞬間から壁がなくなって、もう本当に、なんでもいいですって思えるようになりました」
本の中には洋服のタグが出ていたり、帽子がひっくり返っていたり、ファッション誌ではありえないような写真もチラホラ。けれど、それにNGを出さずに進めることの背景には、「それも含めて自分の日常であって、まわりが思っているように私も全然完璧ではない」という思いが込められています。
「完璧なものって、見ていてうっとりする反面、息が詰まることってありませんか?私はあるんです。すっごくきれいなご飯をインスタで見ると携帯をオフにしたくなったり(笑)。私の本を見た人にはそんな思いをしてほしくない。だって、お母さんって本当に大変ですよ。みんながんばっているから、もう生きてるだけで素晴らしいよ、それで十分なんだよってことをわかってもらえたら」
そんな東原さんの気持ちは、まさにこの表紙写真が体現しているのではないでしょうか。キッチンに立ち、娘さんと一緒にお料理をしているシーンの1カット。東原さんの手首にはヘアゴムがついたまま。
「ヘアゴムはどんなアクセサリーよりも毎日つけてるものですから」と笑う東原さん。子育てはひとりじゃできない。私だってひとりでがんばっているわけじゃない、ということを繰り返していました。「だからこの本には、ばあば(東原さんのお母さん)だったり、友達にも出てもらいました。私も、たくさんの人に助けてもらいながら仕事をして、子育てをしています」
東原亜希さんの飾らない笑顔…インタビューカットはこちら
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