コロナにも負けない最強メンタル=ロスジェネmeets非正規雇用


そうした思考には、生きてきた世情が背景にあるかもしません。
1979年生まれの私は、ちょうど「ロスジェネ世代」に該当します。ロスト・ジェネレーション、すなわち失われた世代なんて呼ばれ、実際に子供の頃から社会保障制度、終身雇用制度の崩壊や就職難など、悲観的な未来を暗示のように大人たちから言われ続けてきました。だからなのか、なにくそ精神だけは旺盛で、これまでもそのエネルギーだけで生き延びてきたといっても過言ではありません。コロナ騒動の状況下にこそ、ロスジェネmeets非正規雇用で培ったそのメンタリズムを発揮して、「今に始まったことではない、私は失われていない、しっかりとここに生きている」そう言い聞かせながら、淡々とやれることに向き合おうと思っています。
 

家にいても、ブラ、外着、メイクは欠かさずに

40歳・非正規雇用歴13年のプロが考えたコロナ騒動を乗り切る「メンタル」_img0
 

とはいえ、今そのガッツを存分に発散するほどの仕事はありません。アニメ『鬼滅の刃』を一気見したり、ゲーム『リングフィット アドベンチャー』でむやみやたらに運動したりしていたのも今となっては懐かしいくらい、気晴らしの方法が底を尽きてきたのも事実。
結局、とりわけ自分でコントロールできない事態に向き合うためには、非正規雇用という働き方が与えてくれた、休まず緩まず継続する、感情的にならず自身の課題と向き合う、コツコツとした地味なセルフマネジメントが役立っています。
今、その中でもっとも手っ取り早くて効果的だったのが、小さなルーティンを欠かさないことでした。「電車通勤で起きていた時間に起床して」「ブラを着けて服を着替えて」「メイクをする」ことが、毎日家にいても心のざわつきを軽減してモチベーションを上げるための、私の“いつものやつ”3点セットです。

 

自炊率100パーセントになったため、何かと丸腰で対面することが多くなった「レンジ扉」には、「乱筆乱文ご容赦願います」と一筆添えたくなるような顔が頻繁にうつるのが巣籠もり生活の若干の盲点でした。が、そんな顔ですら、ギリシャ神話に登場するナルキッソスになりたい……と呟く必要なんてないくらい趣深いなぁ、としみじみしてみるのも一興。今日もたんと食え食え、とレンジ扉の中の自分に声をかければ、ほんのすこーし気分も上向きます。
雨にも負けず風にも負けず、荒波をくぐってきた自分を今日もフルパワーで肯定してあげる。この非正規雇用仕込みのセルフメンタルケア術もまた、長期化の様相を呈してきたコロナ騒動の窮状を乗り切るための私の切り札です。

構成/小泉なつみ