そしてこの“わちゃわちゃ”も細分化していくと、そこには友情と一括りにはできない感情がそれぞれ流れているわけで。個々の関係性を紐解いていくと、その性質はまさに十人十色。

どうしてもこいつにはかなわないという羨望やライバル心だったり。他の人には全然興味ない推しが唯一こいつだけは認めているという特別感だったり。普段はクールキャラの推しがその相手にだけはなぜか甘えん坊気質になったり。逆にイジられキャラの推しがその相手といるときだけはSっ気が爆発したり。そのひとつひとつが大好物。全部まとめてお前ら最高だみんなで一緒にひとっ風呂浴びてこい!って気持ちになる。

 

だから、実は推しのインタビューを読むのも好きなのですが、他の人がインタビューの中で推しについて話しているのを読んだときの方がテンションが上がります。推しのことをこんなふうに思ってくれているんだってうれしくなるし、特に推しの話が頻出するタイプの人には「本当、うちの推しがいつもお世話になって」と謎のオカン精神が顔を出す始末。結果、推しの友達のことも好きになって、いつの間にかその子までまんまと推しになっているから、推しの友達は推し説は本当やばい。むちゃくちゃ人を幸せにするタイプのマルチ商法だわ。
 

 

わちゃわちゃを流すだけのチャンネルができたら、日本のGDPを5%くらい上げます


結局、なんでこんなにわちゃわちゃが好きなのかと言うと、とどのつまりはそこに平和があるから。ちょっと口を滑らせたら、至るところからテポドンが乱射される地獄のような現代社会。有名人だけでなく、ごく普通に暮らす僕たちでさえ、日々の人間関係に多大な緊張感と、そこから生ずる疲労感に苛まされています。空気を読まなきゃという強迫観念と失敗できないプレッシャーで、毎日、日が暮れる頃にはヒットポイントはゼロ。

そんな地雷原を竹馬で渡り歩くような日常を送る僕たちが、人類愛を最も美しいかたちで体現した推しのわちゃわちゃに安らぎを見出すのは極めて自然の道理。そこに男子の友情が持つおバカ感や、後腐れのないさっぱりとした雰囲気、そして男気あふれるリスペクトがブレンドされることで、その浄化効果は地球を丸洗いできるレベル。推しのわちゃわちゃは、レッドブルより翼を授けるし、ドモホルンリンクルよりお肌にいいのです。

ということで、そろそろどこかのテレビ局、24時間、若い男の子たちのわちゃわちゃを流すチャンネルとかつくっていただけないでしょうか。ほら、山とか湖とか世界の大自然をひたすら流すだけの番組みたいな感じで。

男の子たちが一緒に料理をしたり。特にオチのない話をしながらテレビを見たり。なんの会話もせず漫画を延々読みふけったり。そういうのだけ流してくれる番組をつくってもらえたら、確実に日々の活力源になるし、次の日の業務効率もめちゃくちゃ上がる。日本のGDPを5%くらい上げる自信はあるので、何卒ご検討の程よろしくお願いいたします!
 

前回記事「転機は高橋一生だった。推しの肌色面積問題、着てる方が好きなオタクの意見」はこちら>>

「推しが好きだと叫びたい」連載一覧
第1回:あの日“推し”に出逢って、僕の人生は変わった
第2回:荒みがちな心を癒すのは“推しのいる生活”
第3回:ドラマ『恋つづ』から考える、推しのラブシーン問題
第4回:自粛生活では新たな推し=生きる燃料。朝ドラ俳優・窪田正孝の底知れぬ魅力
第5回:こじらせてると解ってる、でも言いたい「推しに認知されたくないオタク」の本音
第6回:「推しの顔が好きすぎて語彙力死ぬ」問題をライターの僕が本気で考えてみた【ライター横川良明】
第7回:やっぱり顔が好き!顔から推しに堕ちたオタクを待つさらなる落とし穴【ライター横川良明】
第8回:SNSで話題の史上最強沼・タイBLドラマ『2gether』の素晴らしさを語らせてくれ
第9回:ナイナイ岡村の炎上騒動から考える「長く愛される推し」に必要なモノ2つ
第10回:転機は高橋一生だった。推しの肌色面積問題、着てる方が好きなオタクの意見
第11回:オタクの心の浄化槽。男子の“わちゃわちゃ”が今の時代に求められる理由
第12回:推しが好きだと叫んだら、生きるのがラクになった僕の話

 
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