労作性熱中症を予防する7つの方法

 

一方、この記事を読む方の多くは、労作性熱中症の方が問題になるでしょう。「1日ぐらい大丈夫」という軽い気持ちが重度の症状につながる可能性がありますので、しっかりと対策をとっていただく必要があります。労作性熱中症には、以下のような予防法があります。
 

 

(1)運動は、涼しい時間に


運動する時間は、可能であれば早朝や夕方以降など涼しい時間帯から選んでください。暑い環境では、先ほどご説明した様々な熱放散メカニズムが働かなくなってしまうため、なるべく涼しい時間を選択することが最善の予防法になります。
 

(2)水分摂取は運動前から


水分摂取は運動開始4時間から6時間前に開始することが推奨されます(参考5)。量としては、運動開始前に最低ペットボトル半分から1本ほど飲んでおくことが望ましいと思います。また、運動中、運動後もこまめな水分摂取が大切です。このため、水分は常に携帯するようにしてください。

逆に1日に10リットルを超えるような水分摂取を行うと、水分調整機能を超えてしまい、相対的にナトリウムの値が低下する低ナトリウム血症の恐れがあることも知られています(参考6)。さすがに10リットルも飲むことは珍しいと思いますが、何事もバランスです。飲めば飲むほど良い、ではないことは頭に入れておきましょう。

(3)水分は種類も考えて


同じ水分でも、利尿を促す作用のあるカフェインが入っていると、水分補給効率が下がります。紅茶、緑茶、烏龍茶、コーラ、コーヒーなどの飲料はいずれもカフェインを含んでいます。絶対にダメな選択というわけではありませんが、カフェインを含まない飲料の方が理想的です。塩分を含むスポーツドリンクの方が良いと指摘する声もありますが、スポーツドリンクに含まれる塩分量はたかが知れているため、大きな差を生むとは考えにくく、1日10リットルのような過剰な水分摂取がなければ水でも構わないと思います。
 

(4)プレクーリングとクーリング


プレクーリングというのは、運動を始める前から体をクーリングしておく手法です。運動前から開始することで熱中症予防に有効な可能性が指摘されています(参考7)。プレクーリング及びクーリングの方法は、外から冷やす方法と中から冷やす方法があり、ともに有効です。

外から冷やす、手軽にできる方法は、氷枕や冷えたタオルで体を冷やす方法です。動脈が体の表面近くを通っているところを冷やすと冷却効率が良くなります。首、脇の下、太腿の付け根がそれにあたりますので外出中であれば、首や脇の下が冷やしやすい場所かも知れません。また、通勤などでは氷枕を持ち歩くというのも難しいでしょうから、凍ったペットボトルを持ち歩くのも手です。ペットボトルは、水分補給も可能にしてくれるので、一石二鳥だと思います。あるいは、運動時には、冷却ベスト(またはクールベスト)と呼ばれるグッズも売っていますので、そういったものを使用する方法もあります。

中から冷やすためには、冷たいものを飲んだり氷をとったりすれば良いと思います。また、より効果的に冷やす方法として、アイススラリーと呼ばれる飲み物もあります。これは、「飲む氷」とも言われ、液体に細かい氷の粒が混じった飲料のことで、プロスポーツなどで使用されています。通常の飲料よりも温度が低く、氷よりも飲み込みやすいため、熱中症予防に有効と考えられています。国内では、大塚製薬のポカリスエットなどで製品化されています。

運動中は、このような方法を参考に、こまめに休憩をとり、クーリングを行うことが大切です。

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