「簡単・手抜き」で100点満点の食事を
自分で料理をしない人が増えています。現代は、コンビニやスーパーなどで簡単に1人分の食べ物が手に入る時代ではありますが、材料を調達し、切って、調理して食べることは人間の原点です。料理は、現代社会の中で、唯一原始に戻る仕事だとも言えます。
では、何を「料理」しましょうか。
まずは、「ごはん」!
コロナ禍で家ごもりをする人が増えたとき、メディアを通じて「炭水化物を十分とる食事を!」と注意喚起がされました。現代は、炭水化物はまるで目の敵かたきのような扱いで、食事から「抜く」人が多いのですが、それはとんでもない間違いだと私は思います。脳という司令塔が通常使えるエネルギーはブドウ糖だけ。筋肉を動かすためのエネルギーもブドウ糖。その供給源である米や麺、パンなどの炭水化物は、食事の中でいちばん大切にしたいものです。穀類には食物繊維も豊富なので、シニアの悩みのひとつである便秘の改善にも効果があります。
次に、「肉」「魚」「卵」「大豆」などのタンパク質食材。
これまでにも繰り返し語ってきたように、シニア世代はこれまで以上に積極的にタンパク質食材をとる必要があります。3回に分けて、1日に必要な量を食べます。
最後は、野菜、芋、海藻。
それ自体のエネルギー量は低いのですが、ビタミン、ミネラル、ファイトケミカルを含み、免疫力アップに貢献し、身体の老化を進める活性酸素を減らしてくれます。
といっても、1年365日、1日3回、毎食料理をして食べるためにはかなりの努力を要します。「冷凍」や電子レンジを活用して「簡単・手抜き」でいきましょう。時間をかければかけるほど、手間をかけたらかけただけおいしくなるというのは、台所仕事をしない人たちが作った神話かな、と思います。
電子レンジ調理による様々なレシピが大人気のシニア料理実習教室ですが、生徒さんにはいつもこう言っています。
「お家に帰って、ご主人に『これはたったの2分で作ったのよ』なんておっしゃってはいけません!」
そう言うと、きっと「手抜きだ!」と返ってくるに違いないからです。時間をかけた料理を否定はしませんが、毎日、毎食作って食べるのはとても根気のいることです。ごはんがあって、肉や魚などのタンパク質食材があって、野菜たっぷりの副菜があれば、それで「100点満点」! 作り方やかけた時間は、本質的な問題ではありません。
もうひとつ、シニアの100点満点の食事を助けてくれるもの。それは、自分が好きな「味」の一品を持つことです。シニア世代はお腹がすくことはあっても、若いときのように食欲旺盛ではありません。でも、好きな味や食べ方があれば、それが食欲を呼び起こしてくれます。お気に入りの柚子胡椒や七味で味にアクセントをつけたり、ねぎやしょうがなどの薬味をたっぷり用意したり。厚切りがおいしいとされるローストビーフも、薄切りのほうが好きなら遠慮なく薄切りで召し上がれ。
* * *
私の料理教室や講演会に参加した方は、皆さん口をそろえて「女版綾小路きみまろみたい!」とおっしゃいます。それくらい、面白いんですって。本人には笑わせようというつもりは毛頭ありません。いたって真面目にやっているのですけどね。
これまでの人生、娘であり、母であり、妻であり、舅にとっては義理の娘でもあり……という中で、それなりに気兼ねや遠慮もありました。でも、今や私ひとり! 遠慮も気遣いもありません。これからの人生、ますますクレッシェンドで行かずにどうしましょう。
『料理家 村上祥子式 78歳のひとり暮らし ちゃんと食べる! 好きなことをする!』
著者:村上祥子 集英社 1760円
電子レンジ調理の第一人者・料理家の村上祥子さん。挑戦の連続だった料理家としての歩みに加え、78歳、シニアと呼ばれる年齢になっても輝き続けるためのヒントが詰まった一冊です。誰でも簡単に作れて美味しい、お手軽レンジレシピも充実!
構成/金澤英恵
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