40歳という節目で、女性は自らの生き方を振り返るものではないでしょうか。

「こんなはずじゃなかった」と後悔しても過去は変えられず、心も身体も若い頃には戻れない。

さらに世の中が激変した今、私たちは新たな時代へと踏み出す岐路に立っています。

これからを生きる女性に必要なのはきっと風のような軽やかさとしなやかさ。既存の価値観に縛られるのは、もう終わり。

これは立場の異なる二人の女性が、それぞれの人生を見つめ直す物語。

 

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40歳。もう「女子」とは呼べない女たち


青山に誕生したばかりのホットスポットは、平日夜にもかかわらず大いに賑わっていた。

人気のメインダイニングはエントランス近くのテーブル席まですべて埋まっている様子。そのほとんどが一見してトレンドに敏感な女性客だ。

「ついに絵梨香も40歳かぁ……」

店内最奥のソファ席で、進藤早希がしみじみ呟いた。

無造作でありながら計算されたポニーテール。マディソンブルーのフレアワンピースにひとクセあるゴールドのアクセサリー。女性ファッション誌のエディターらしく随所に洗練が垣間見える。

そんな早希の視線の先には、ショートケーキとフルーツが盛られた大きなプレートがあった。チョコペンで 「Happy 40th Birthday 」の文字が描かれている。

これは誕生日を迎えた親友、田口絵梨香のため事前に早希が依頼しておいたメッセージなのだが、いざ目の当たりにすると40という数字に圧を感じてしまった。ろうそくの火が消えてしまうと、さらに。

――40thは入れなくても良かったかな。

なんて密かに思っていると、そんな内心を見透かすように絵梨香が赤い唇を尖らせた。

「他人事みたいに言ってるけど、早希だってあと3ヶ月でしょ」

痛いセリフに「ぎゃー、言わないで」と耳を塞ぐ。

「40歳ってさ、もう立派なおばさん……」

そう口にして「おばさん」という響きに自らたじろいだ。

30代ならば「アラサー女子」という呼び名も市民権を得ているが、40代はダメ。どう足掻いてももう女子ではない。やはり「おばさん」が正解だ。

【写真】アラフォー女性編集者のリアル
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