イモトアヤコから見る「いとうあさこ」は意外にも“か弱くて愛おしい人”
プライベートでもとても仲がいい、いとうあさこさんとイモトアヤコさんに、メイクアップ・アーティスト、水野未和子さんが提案する「ディファインメイク」を体験してもらう連載企画。「イモトアヤコ編」に続き、「いとうあさこ編」のスタートです。ディファインメイクとは、コンプレックスやエイジングをカバーするためでなく、誰かのようにカモフラージュするためでもない、自分自身の延長線上にある唯一無二の美しさを「ディファイン」する(明確に際立たせる)ためのメイク。その人が持つ内面の魅力を「顔」や「表情」に引き出すものです。
あさこさんの美しさは、どんなふうにディファインされるのか……? そこで今回は「あさこさんって、本当はどんな人?」。まずは、メイクをする前に、あさこさんの人となりを、ご自身とイモトさんのインタビューから探ります。
「あさこさんに一生ついていく」と心に決めたドッキリ事件
ふたりが仲良くなった「きっかけ」は、あさこさんが前々回のインタビューで語ってくれました。イモトさんは「申し訳ない」と思っていたんですよね?
「そうなんです……。連絡先を交換して、本気で『ご飯に行きましょう』と楽しみにしていたのに、先に『仕事』が来ちゃったんですよね。初めての食事なのに、『ドッキリ』の仕掛け人として、あさこさんをだますために誘うなんて! 本当に心が痛みました。あさこさんは未だに『違う』『気づかなかった』と言ってくれるのだけれど、じつはそのとき、こんなことがあったんです。待ち合わせたお店の個室には、至るところにマイクやカメラが設置されていて、明らかに怪しい空間。食べて飲んでしゃべって1時間ほど経ったころかな? 上から、ぼとっとマイクの送信機が落ちてきたんです。わーっ、ばれた、どうしよう? とパニックになって……。慌てふためく私の傍らで、あさこさんは冷静に店員さんを呼んで、『メニューの送信機かな? これ、外れたみたいなので、直してもらえますか?』と。いやいや、あさこさん、絶対気づいたよね? わかってるよね? 気づかないわけないのに、わからないわけないのに、フォローしてくれて。私に恥をかかせなかったんですよね。そのとき、心に決めました。この人に、一生ついていこうって」(イモトさん)
嘘をつかない人。手を抜かない人。それでいて、誰より、気を遣う人。
「私は正直、TVだからと自分というキャラクターを『演じる』こともあるんですが、あさこさんは一切それがないんです。そして、私が知る限り、全現場でまわりのいろいろなことにいち早く気づいて、そこにいる人全員に気を遣ってる。自分を後回しにして、皆のことを気遣う、素晴らしいリーダーです」(イモトさん)
この撮影でも、現場に到着するなり、私たちスタッフにまで細やかな気遣いを見せてくれたあさこさん。でも、自身のことは「きつい性格なんです」とおっしゃっていました。
「あっ、そうそう、あさこさんは『タクシー』に関しては厳しめです(笑)。運転に厳しいんですよ。じつは私、18歳のとき、地元の鳥取で自動車運転免許を取ってから10年以上ずっと、ペーパードライバーだったんですね。30歳で車を手に入れたんですが、あさこさんはそんな私が運転の練習をするのに、最初からつき合ってくれて。たまに、あさこさんを助手席に乗せることがあるんですけど、ウィンカーを出すタイミングが遅いと、間髪を入れず『遅いっ』。いやあ、あさこさんの隣がいちばん緊張します(笑)」(イモトさん)
「あさこさんの弱さに気づける自分でいたい」
明るくて温かくて、賢くて強くて。それはもちろん、「本当のいとうあさこ」。一方で、「誰よりもか弱い存在」であることも、本当のあさこさんなのだと、イモトさんは言います。
「私たち、今まで3回、一緒にロケに行ったことがあるのですが、そのとき、あさこさんが怯えながら挑戦している姿を目の当たりにしたんです。私もかなりの『びびり』なんですけど、でも私なんて比べ物にならないくらい、あさこさん、本当は『怖がり』なんですよね。こんな心理状態でありながら、自分を鼓舞して挑戦していたんだと知って、愛おしくなりました。あさこさんは、経験や立場を大切にする方なので、決して弱音を吐かない、だからまわりも『あさこさんは、ひとりで大丈夫』と思いがちなんですよね……。か弱いひとりの女性なんだと思ったら、あさこさんをぎゅっと抱き締めたくなりました」(イモトさん)
イモトさんに何かがあったとき、あさこさんは、何も言わずに、傍らにいてくれるのだそう。
「定期的に食事に行ったり、たまに泊まりに行かせてもらったり。私に何かがあると、あさこさんは、そのことには直接触れず、寄り添って、ただただ一緒にいてくれるんです。言いたいこともあるのだと思うけれど……、でも、言葉はなくても、私を思ってくれているんだとひしひしと感じる。私も、あさこさんに寄り添っていられる人間でありたいと思います」(イモトさん)
ちなみに、あさこさんに「抱き締めたくなる」話、しましたか?
「飲んだときに言ったことがあるかもしれないけれど、きっと、覚えてないと思いますね。きっとにやにやしながら『また、小馬鹿にして』って言われる気がします(笑)」(イモトさん)
人と自分を比べないあさこさんの目標は「生きる」「頑張る」
イモトさんが語るあさこさんは、どこか私たちがメディアを通じて知っていたイメージと重なります。それに対し、あさこさんは……?
「私ね、『人』に興味ないんですよ(笑)。他人と比べたり、他人を羨ましいと思ったり、あまりそういう感情がなくて。あえて言うなら、男芸人は歳を取ってからも若くて可愛い女性を捕まえて結婚するのに、何でその逆はあまりないんだろう? と比較しては羨ましがっています(笑)。それくらいかなあ。見た目に関しても、誰かと比べたこともないし、自分の顔を好きとか嫌いとか、考えたことがないかも。好きも嫌いも、だって『この顔』だもの、って思ってる。母にも似てる、父にも似てる、そりゃあ、この顔になるなあ、って」(あさこさん)
TVの企画でダイエットに挑戦したことがきっかけで、「『綺麗になる』が、私の人生には必要ない」と悟ったのだといいます。
「実際に痩せてみて、『小綺麗』にはなるけど『美人』にはならないって思ったんですよね。それなのに、ダイエットをしている間、友達とご飯に行けない、美味しいものを食べられない……、それでは『プラス』と『マイナス』が合わない、って。つまり、私の場合、痩せて得られるメリットよりも、デメリットのほうが大きいと気づいたんです。綺麗になることに喜びを感じる人がたくさんいて、そういう方の努力のほうが圧倒的に素晴らしいとわかってはいるんです。でも、私は小さい頃からずっと『飲食』に重きを置いていて、毎回、これが最後の晩餐になってもいいと思えるように、毎日の食事に手を抜きたくないと思ってる。別に、コンビニのおにぎりでもいいんです、『この海苔、ぱりぱりで美味しいーっ』と思えれば、それでいい。そうそう、反抗期のときも、母と全然しゃべらないくせに、家族と一緒に食事をしないくせに、『母ちゃん、飯はうまいんだよな』と言いながら、遅い時間にひとりで冷ご飯を食べる、みたいな不良でした(笑)」(あさこさん)
そんなあさこさんが目指す、これから。
「誕生日を迎えるたびに、『今年の目標は何ですか?』と聞かれるんですよね。ここ数年は『生きる!』って答えているんです。人生、一生懸命生きたいと思う。今のご時世、あまり『頑張る』と言い過ぎるのもどうなの? というムードがあるけれど、私は昭和の人間だから、すごく好きな言葉なんです。『頑なに』『張る』って、その先にもし、ゴールがあったら、すごく気持ちいいじゃないですか」(あさこさん)。
あさこさんにとって、メイクやおしゃれが意味することは?
あさこさんは、ほとんどノーメイクで過ごしているのだと言います。
「50にもなって私、何の化粧道具も持っていないんです。持っているのは、リップクリームとニベアだけ。私、兄と妹がいるんですけど、小さい頃、母が三兄妹を並べて、『青い缶』からクリームを指先に取って、それぞれの鼻にぺっ、ぺっ、ぺっ、と……。以来、ラッキーなことにトラブルというトラブルがなくて。女子校育ちの私は、『気を抜く』も『気を張る』もない世界で、それが普通と思って育ってきたし、付き合っていた殿方たちは皆、飲み友達からいつの間にか一緒にいた人たちばかりだから、デートでおしゃれをする習慣もなかった。そして、仕事でも『命がけ』だから、日焼け止めを塗らない。だって崖の上で泣きながら『あ、日焼け止め塗らなきゃ』なんて思わないですよね(笑)。結局、どんどん雑になって、今に至ります」(あさこさん)
洋服に対しては、どこか保守的。
「要らぬ劣等感があるんですよね。『こんにちは!』と言ったら『こんにちは!』と返してくれるような、優しくしてくれる洋服屋さんにしか行けない、みたいな(笑)。人見知りなんですかね? 美容院もそう。新しいお店には、なかなか行けません」(あさこさん)
そして……、「家に鏡がない」との衝撃発言。
「あっ、洗面所はありますよ、もちろん(笑)。40歳ぐらいで、次第にお仕事をいただけるようになって、お金が少し貯まったときに、初めて、『姿見』を買ったんですね。ところが、置き場所がわからない。そのままときが経って、結局今、床に置いてる(笑)。そうなると下半身しか映らないですよねぇ」(あさこさん)。
心も見た目も、正真正銘、「素」のあさこさん。ディファインメイクは、そんなあさこさんの魅力をどう掘り起こし、どう際立たせるのか? 次回をお楽しみに。
<書籍紹介>
『ディファインメイクで自分の顔を好きになる
“私だけの魅力”が絶対見つかる自己肯定メソッド』
著 水野未和子
定価 1400円(税別)
10月30日発売
Kindle版も配信中!
講談社
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数々のファッション誌や広告で女優やモデルのメイクを手がけているメイクアップアーティスト、水野未和子さん。水野さんのメイクの特徴は、人によって違う、その人だけの魅力をディファイン(明確に)すること。何かを隠すのではなく、誰かのようになるのではなく、「自分になる」メイクです。この本では、あらゆる年代、あらゆる属性の誰もが自分の魅力を底上げできる「ディファインメイク」の考え方と、そのメソッドを詳しく紹介します。
撮影/目黒智子
スタイリング/斉藤くみ(イモトアヤコさん分)、
篠塚麻里さん(いとうあさこさん分)
取材・文/松本千登世
構成/松崎育子(編集部)
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