指示を出すときは、子どもの近くで


家事などで忙しくしているときに、子どもの行動を注意したり、指示を出したりする場合、遠くから言葉をかけていませんか?

そうするとどうしても大きな声を出して怒り口調になりますね。子どもはそれを聞いても声の大きさや口調の激しさに気をとられ、肝心の指示が頭に入りません。

また、指示が伝わらないため親は同じことを何度も繰り返し言うことになり、子どもの反応はよけい鈍くなります。たとえば、口うるさい妻の小言を聞き流している夫をイメージしてみてください。子どもの反応もそれと同じで、遠くから何度叫んでも、当人の耳には届かない場合がほとんどです。

忙しくても、指示を出すときは子どものそばに行ってから言葉をかけるように心がけてください。

 


●子どもに届く3つの指示の出し方


①そばに行って話しかける
面倒だと思っても家事や仕事を中断し、子どものそばに行きます。まず名前を呼びかけて注目させてから、子どものほうを見て言葉をかけるようにしましょう。同じことを言っていても、遠くでイライラしながら何度も指示を出すより、短時間で聞き入れてくれる確率が高くなります。

②注目させるには、目を合わせて話す
子どものそばで指示を出しても注目してくれない場合は、しゃがんで目線を子どもの目線の高さに合わせます。そして子どもと目を合わせ、しっかり手を握りながら言葉をかけてみてください。目合わせとスキンシップの効果で、親に注意を向けて指示を聞くようになるでしょう。

③どうしても近くに行けないときは……
家事などで忙しく、どうしても子どもの近くに行けないときは、まず名前を呼び、注目させてから指示を出します。それでも伝わらないときは、「ママ、さっきなんて言ったかな?」と、言われたことを思い出させると、行動に移す確率は高まります。できれば家事や仕事の手を止め、きちんと子どものほうを向いて言葉をかけましょう。

:平岩さんからひとこと:
無理しないで楽しく、子どもとの自然な距離感の中で対応しましょう。横からとか後からとかではなく、前から子どもを見てにこっと笑顔を見せてから指示する、話しかける、それがコツですね。

 

* * *

ある日、息子の行動にイラっとして注意したとき、ふと鏡に映った自分の顔を見たことがありました。
「恐い! 恐すぎる、私の顔!」
まるで般若か鬼かという形相に、愕然としてしまいました。
「いつも、こんなに恐い顔で注意していたのか……。ごめんね」と、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。
普段鏡を見るのは、心が穏やかな状態のときがほとんどなので、自分の怒り顔に驚いてしまったのです。怒っているときだけでなく、子どもの療育に夢中になっているときなども、子どもと真剣に向き合うあまり表情が険しくなり、恐い顔になってしまうことがあります。

親のこんな顔を見れば、子どもからも笑顔が消え、反応も悪くなってしまいます。わが子を笑顔で見守っていけるよう、言葉かけの前には特に、意識して口角を上げる習慣をつけましょう。

次回は、苦しさを笑顔に変えるママ・パパへの4つのアドバイスをご紹介します!

著者プロフィール
shizuさん
:自閉症療育アドバイザー。1960年代生まれ。2児の母。講演会などで、子育てで悩んでいる保護者に、日常生活のなかでできる楽しいかかわりや言葉かけを紹介している。無料メール講座「発達障害の子と楽しく生活する7つのコツ」には2000人以上が登録。著書に『「言葉がけ」ひとつで行動が変わる! 子どもの叱り方・伝え方』(PHP 研究所)がある。
【ブログ】「発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉」

監修
平岩幹男さん
:医学博士。1951年戸畑市(現北九州市)生まれ。東京大学医学部卒業後、三井記念病院、帝京大学医学部小児科、戸田市立医療保健センターを経て、2007年Rabbit Developmental Research 開設。日本小児保健協会理事、国立成育医療研究センター理事などを歴任。東京大学医学部非常勤講師。『みんなに知ってもらいたい発達障害』(診断と治療社)など著書多数。

 

『発達障害の子どもを伸ばす魔法の言葉かけ』
著者:shizu 監修:平岩幹男 講談社 1400円(税別)

発達障害の子どもを伸ばすのは、親からの適切な「言葉かけ」。ABA(応用行動分析)を使用した「言葉かけ」の方法を、具体的にわかりやすく紹介します。著者が自身の体験をもとに教える、子どもも親も笑顔になれるヒントが詰まった一冊です。


構成/金澤英恵

第2回、「【発達障害の子をもつ親へ】その苦しさを笑顔に変える4つのアドバイス 」は12月2日公開予定です。