スタイリスト、ミモレコンセプトディレクターの大草直子が着こなしのアイデアや日々の思いを綴ります。
ミモレでもコラムを寄せてくださっている熊倉正子さん。インターナショナルで華やかなライフスタイル、それだけではないパイオニアのような仕事との向き合い方を、私、20代の頃から「素敵だなあ」と拝見していました。表参道の住宅街でプレスルームを、そしてその建物の1階でセレクトショップ(本物のセレクテッドショップ。多くのショップでたくさんのブランドやアイテムが“かぶってしまう”今は、考えられないオリジナリティと驚き、発見にあふれていました)をオープンされて。たくさんのインターナショナルブランドを、その審美眼でセレクト、紹介されていました。
私、大学卒業後出版社に入社し、実は最初の6カ月はヴァンサンカン編集部に配属されたのですが。そこでよく、熊倉さんがやられているプレスルームやセレクトショップに、リース(借り出し)や、もしかしたら先輩のお使いでお伺いしていて! ある日、そのショップのセール(もしかしたら関係者向けの限定セールだったのかもしれません)に呼んで頂き、20代のなけなしのボーナスをつぎこんで、あるものを買いました。ずっと憧れていた「もの」ではあったけれど、セールになったって、私にはとても手を出せるものではなくて、けれど欲しくて欲しくてかなり長い時間、ショップで迷っていたのを覚えています。その「もの」とは、マリー・エレーヌ・ドゥ・タイヤックのピンクトルマリンのリング。デザイナー自身の華麗なバックグラウンドもあって、ヴァンサンカンで何度か特集したので、その価値、美しさはもちろん、インプット済み。何度もつけたり考えたりしていたら、熊倉さんがふと近寄って来られて、こうおっしゃったんです! 「このリングの石の美しさはきっとほかにはないと思う。そして、お直しができないデザインで、ぴったりのサイズなら、運命よ」
買いました。
その後、不注意で石が取れてしまったり(子供を抱っこしようと、どこかにぶつけ、石が取れて道路にコロコロっと。排水溝手前でリアルに止まった)しましたが、お直しして、今でも大切に使っています。その後、マリー・エレーヌ・ドゥ・タイヤックの表参道のショップでローズクオーツも買い足しましたが、このリングのような深いトルマリンは、「今はあまりない」と言われました。
石と私。素敵な女性と私。経過した時間と私。今と私。
なんだか、すべてが愛おしく、感謝と愛に満ちた金曜日です。
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