【習慣のギモン③】うがい薬はカゼ予防だけでなく、むし歯予防にも効果的?

 

→【答えはNO】かえって口腔内の細菌バランスが崩れてしまう!

カゼ予防としてうがい薬での消毒を、一日に何回も行なう人がいるようですが、口腔内の細菌バランスを崩してしまうのでおすすめできません。そもそも、うがい薬はカゼの予防には適していないことを示すエビデンスもあるくらいですから、予防目的で行なうものではないことを知っておきましょう。

 


一般的なうがい薬にはポビドンヨードなど殺菌力の高い薬剤が含まれています。細菌やウイルスを不活化することができますが、多用すると体を守るよい細菌まで殺してしまったり、抗菌成分に対して抵抗性を持つ細菌が増えてしまったりして、口腔内の細菌バランスを崩すことになってしまいます。また、アルコールが含まれるうがい薬は、炎症がある(のどが腫れている)場合は禁忌(使ってはいけない)です。

京都大学健康科学センターの研究でも、カゼ予防が目的の場合は水うがいで十分という結果となっています。

〈堀先生の一口アドバイス〉セルフケアが難しい高齢者や、事情があって長期間、口腔ケアができない場合などはうがい薬の効果も期待できますが、極端な使用は口腔内の細菌バランスを崩してしまうのでおすすめしません。

マスクがむし歯を悪化させる!


2020年、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行して、働き方や生活様式がずいぶん変わりました。なかでもマスクの着用は、今後も感染症対策のために継続することでしょう。ただ、マスクには口腔環境を悪化させるデメリットもあるので要注意です。

マスクをすると息がしづらくなるので口呼吸になりがちですし、口の中の温度が高くなります。口呼吸を続けていると口の中が乾燥して免疫力が低下してしまいます。また、温度が高いと病原菌が増殖しやすい環境になってしまいます。二重の意味で病原菌が増殖しやすく、感染症にかかりやすくなるのです。私もコロナの自粛期間明けに診察していて、患者さんの口の中の状態が以前より悪化していると感じました。

むし歯菌や歯周病菌などが多いと口の中の悪玉菌が優勢になって、病原菌に感染するリスクが高くなります。感染症予防のためには歯のケアが必要ですし、マスクをつけている時間が長くなるほどバイオフィルムがたまりやすくむし歯や歯周病のリスクが高まるので、定期的なメンテナンスが特に重要になります。

次回は、「矯正、インプラント、入れ歯。未来の健康を左右する大人のお口事情」についてご紹介します!

著者プロフィール
堀 滋さん
:サウラデンタルクリニック院長(旧堀歯科診療所院長)。1959年生まれ。日本大学松戸歯学部卒業。昭和大学歯学部付属歯科病院口腔外科勤務の後、日本橋中央歯科診療所などを経て、1990年に東中野にて堀歯科診療所を開設。歯学部卒業後も診療の傍ら、スウェーデン・イエテボリ大学で実践されている歯周病臨床実践コース、同アドバンスコースなど、海外の最新治療を学び、治療に取り入れている。2016年、全身の健康につながる心と体に優しい歯科医療を追求するために、自由診療専門のクリニックに移行。2020年秋に東中野から北青山外苑前に移転。

 

『歯のメンテナンス大全』
著者:堀 滋 飛鳥新社 1400円(税別)

歯の健康には“治療”よりも“予防”が大切! きちんと歯磨きすればむし歯にならない? 中高年から矯正してもムダ? といった歯にまつわるQ&Aや、自宅でできるセルフケア、さらにストレス対策まで、自分の歯を1本でも多く残すための知識をわかりやすく伝えます。未来の自分と家族のために、手元に置いておきたい一冊です!


構成/金澤英恵

第2回、「矯正、インプラント、入れ歯……人生100時代を乗り切る大人のお口事情」は1月3日公開予定です。