今回の施策はあくまでコロナ危機に対応したものですが、広い意味で仕事や社員をシェアするというのは、時代の流れといってよいものです。近年、政府は副業を推奨するようになっていますが、もし副業が一般的になれば、それは多くの仕事や労働者を皆でシェアしていることと同じになります。

佐賀県は11月7日、不振が続くANAのグループ社員10人の出向を県庁で受け入れることを発表した。羽田空港で説明する山口祥義佐賀県知事。 写真:Aviation Wire/アフロ

また、みずほ銀行のように希望する社員に対して週休4日制を選択できる制度を導入する企業も出てきましたが、これは、ひとつの仕事を複数の社員でシェアする、いわゆるワークシェアリングのひとつと見なすことができます。ワークシェリングは欧州の企業を中心に導入されている制度で、不況になった時でも解雇を実施せず、賃金を大幅に引き下げる代わりに、皆で労働時間を減らして仕事をシェアするというものです。

 

みずほで導入された制度は欧州のワークシェアリングとは異なりますが、解雇を伴わずに雇用を調整するという点では同じ役割を果たします。余った時間を利用してスキルアップに励み、最終的には転職することになるかもしれませんし、人によっては、介護など家族のために一時的に時間を割くという選択肢もあり得るでしょう。従来の硬直的な雇用制度では、こうした自由な選択はできませんから、考え方によっては、働き方の多様化をもたらしてくれます。

これまでの日本社会は就職するというよりは就社するという感覚が強く、雇用が安定している分、自由度が少なかったわけですが、こうした従来型の雇用制度は良くも悪くも維持が難しくなっています。これからの時代は、一生のうち、何回か仕事を変えるのが当たり前になってくるでしょう。

その意味では、社内の異動で仕事を変えることと、転職で仕事を変えること、そして、今回、紹介したように出向で仕事を変えることの境界線は限りなく小さくなります。

今回、行われた取り組みは、コロナが終息した後にも、何らかの形で継続する可能性が高いと考えられますし、仕事を何回か変えることは、キャリア形成上、よい効果があることも知られています。一部の人は不安に思うかもしれませんが物事は考えようです。これからの時代は、一生のうち何回か仕事を変えることを前提に、キャリアプランを立てることが重要でしょう。


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