住宅ローンの「ボーナス返済」には注意

 

西山:今後、ボーナスを含めて年収が下がる可能性があると、夫婦共働きの方はダブルで影響を受けることになるので要注意ですね。40~50代ですと、住宅ローンの返済中だったり、教育費にお金がかかったりする方が多いと思います。

 

深野:はい、特に注意したいのが、住宅ローンの「ボーナス返済」ですね。ボーナスが減って、ローンの支払いが滞ってしまっては大変です。金融機関に相談して、ボーナス返済をやめるのも一つの選択肢です。

賃貸住まいの方なら、引っ越しをして住居費を下げることも可能ですが、物件を購入しているとそう簡単にはいきません。一人ひとりのライフプラン次第ではありますが、ローンで行き詰ってしまうことのないように、先手を打っておくことが大切です。

西山:今ローンを返済中の方も、これから家を買う方も、「ボーナス返済」はナシにしておくと安心ですね。

深野:そうですね。今は影響がない方でも、「残業時間が減って収入が下がり、住宅ローンの返済がきつい」というご相談も増えています。

先日ニュースでも話題になりましたが、現在、住宅ローンの平均完済年齢が73歳なんです。現役世代で収入があるうちはよいですが、例えば65歳で仕事を引退してから、あと8年もあります。その間もボーナス返済があれば、生活が大変苦しいでしょう。年金からはボーナスが出ませんから。

西山:ローン返済が一度でも滞ってしまうと、大変ですものね……。

深野:もし「住宅ローンの借り換えをしたい」と思っても、過去に一度でも返済が滞って、いわゆる“傷”がある状態ですと、審査がかなり厳しくなります。
せっかく条件のよい住宅ローンを見つけても、借り換えられるチャンスを逃してしまうのです。

少し先を見越したうえで、コンスタントに住宅ローンを返済していけるように整えていきたいですね。ローンの完済の時期が65歳以降という方は、ボーナス払いをやめて組み直すなど、早めに見直しをしておきましょう。

片岡:ちなみに……オリンピックが開催されるかどうかによって、経済は大きく変わるのでしょうか。

深野:オリンピックが開催になれば、経済としてはプラスになるとは思います。
仮に開催がなくなった場合、宿泊や移動、飲食に関する業種には影響があると思いますが、競技場などはすべてつくってありますから、景気が底割れしてしまう、ということはないと思います。

それよりも、今は今後のボーナス減や収入減の、個人の家計への打撃を考えておきたいですね。「備えあれば憂いなし」のスタンスで、現預金については少し厚めに持っておくことが大切です。

まとめますと

① 収入が多い人ほど、ボーナスの割合が多いので注意
② 住宅ローンのボーナス返済は、できるだけ避ける
③ 家計をボーナス頼みにぜず、何かあったときに対処できるように、預貯金を多めに準備しておく

ということをしっかり心がけておきましょう。
 


深野康彦  Yasuhiko Fukano
ファイナンシャルプランナー(AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士)。FP業界歴30年超のベテランFPの一人。クレジット会社勤務を3年間経て1989年4月に独立系FP会社に入社。1996年1月に独立し、現在、有限会社ファイナンシャルリサーチ代表。BSテレ東「日経プラス10」他、テレビ・ラジオ番組などの出演、各種セミナーなどを通じて、投資の啓蒙や家計管理の重要性を説いている。あらゆるマネー商品に精通し、わかりやすい解説にファンが多い。『55歳からはじめる 長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)等、著書多数。

取材・文/西山美紀
構成/片岡千晶(編集部)

 

前回記事「【2021年の抱負】お金と時間を大切に使うために心がけたい5つのこと」はこちら>>

関連記事
いま「住宅ローンの繰り上げ返済」をおすすめしない理由【令和のお金の新常識】>>

年収の「手取り」は減り続けているという真実。【令和のお金の新常識】>>

コロナ禍でわかった「自分にとって大切な出費」を見直すタイミング>>

今、見直すべきクレジットカードとは?航空系、百貨店のカードを持っている人は要チェック>>

女性の老後はいつか「ひとり」。知っておきたい老後のお金問題>>

 
  • 1
  • 2