元夫には未練はないものの、婚家に置いてきた子どもたちのことは、気がかりでした。高校生とはいえ、まだまだ精神的には子どもです。食べものだって栄養のバランスを考えてしっかり食べてほしいし、わたしのせいでさみしい思いはさせたくなかった。

「LINEをやらない次男は、美しい風景写真をコメントなしでメッセージで送ってくることも。月夜の画像が送られてきたときは、私もベランダから撮ってお返事しました」

夫の帰宅は夜遅かったので、夕方仕事帰りに買い物をして、ひと息つく間もなく、婚家のキッチンで夕食を作り、子どもたちと一緒に食べて、テレビを見たり、その日にあったことを聞いていました。洗濯をして、翌日のお弁当を作って冷蔵庫に入れ、子どもたちが自室に戻るまで家にいました。

 

それから、急いで自分の部屋に帰りつく頃には11時を回っていました。お風呂に入って翌日の仕度をして、あとは寝るだけ。いま考えると、とてつもない体力と気力だったと自分でも感心してしまいます。

元夫からは二人の生活費として食費と高校の月謝(ふたりとも公立高校)や教材費、修学旅行の積立金などを合わせて、毎月10万円もらっていました。これは別居当初、お金に余裕のないわたしにとっては、ありがたいことでし た。子どもたちに作った夕食をわたしも一緒に食べていたので、食費がかなり節約できたからです。

不思議な別居生活でしたが、心がすっかり離れてしまった夫と我慢して暮らしつづけるよりも、わたしにとってははるかにしあわせでした。正式に離婚して籍を抜いたのは、別居を始めてから、5年近く経ったとき。次男が成人してからでした。

 

『65歳から心ゆたかに暮らすために大切なこと』
ショコラ・著 マガジンハウス 1430円(税込)

42歳で別居し、その5年後に正式に離婚。それまで2人の子を持つ兼業主婦だった著者が、ささやかながらも自由な暮らしを手に入れるために実践したこととは? 月12万円の年金で、のびやかに暮らすための日々の心がけとは。働き方から家計のやりくり、大好きなおしゃれの楽しみ方まで。パートナーの有無にかかわらず「老後はだれにも頼らず、好きなものだけに囲まれて暮らしたい」と願う、すべての人におすすめしたい一冊です。


写真/林ひろし

第2回「離婚を決意した私が、老後を一人で安心して暮らすために40代で始めたこと」>>