20年前、今の世の中がどうなっているか想像できていた人はどのくらいいるでしょうか? iPhoneが発売されたのは今から13年前。それからあれよあれよという間にスマートフォンが主流となり、インターネット環境が整備され、日本人の生活も様変わりしました。薄型テレビの登場には「『ドラえもん』の“壁掛けテレビ”キターー!」と驚嘆していた筆者ですが、それもありし日の思い出。「もう、時代のスピードについていけない……」と呟いたところで、確実に未来はやってきます。
“未来の世界”に一抹の不安を抱える筆者のような方にぜひ参考にしていただきたいのが、元日本マイクロソフト代表取締役社長の成毛眞さんが執筆した『2040年の未来予測』。本書は、「今」のデータや状況を分析することで、20年後の世界、そして日本がどうなっているかを教えてくれる一冊です。今回はその中から、成毛さんが考える“日本の学歴の未来”についてご紹介します。

 



日本では学歴の意味がなくなる


著者は本書の中で、「日本では、これから2040年に向けて、学歴の価値は下がっていく」と明言。衝撃的な一言のようにも思えますが、日本の大学進学率を見るとすでにその傾向が表れていると言います。

「そもそも世界的に見ると、日本はもはや学歴社会ではない。受験制度も私が学生の頃と大きな枠組みは変わっていないし、国際比較すると日本の教育水準は大幅に低下していることがわかる。
OECD加盟36か国の大学進学率の平均は58%だ。対して、日本は49%にとどまり、下から11番目だ(※)。別に大学に進学しようがしまいが個人の勝手だが、バブル崩壊の処理に追われている間に、世界から日本が取り残された現実は覚えておいた方がいいだろう

※国立大学協会「2019年国立大学法人基礎資料集」より。カナダ、アメリカはデータが提出されていない

 

1990年代に起こったバブル崩壊による日本経済の急激な後退。その「失われた20年」の間に、日本の教育は世界に水をあけられてしまったというわけです。さらに、大学生の学習傾向とその理由についても次のように言及します。

「大学生が勉強しないのも同じだ。大学生の平均学習時間は小学生よりも短いという統計調査もある。
なぜ勉強しないかというと理由は簡単で、勉強しようがしまいが、大半が入社する企業での処遇がほとんど変わらないからだ。アメリカでは大卒と博士課程修了者は初任給が約5割違うが、日本の場合、よくて2割程度だ。学生にしてみれば金も時間もかけようと思わないだろう。むしろ、理系ですら博士まで進学すると給与があがるどころか就職口も減るのが現実なので、誰も進学しようとしない」

知識と専門性を深めることができる大学という学びの場。しかし、どれだけ大学で勉学に打ち込んだとしても、就職すれば環境も報酬も「新卒」と十把一絡げにしか扱われない日本。学びへの情熱はいつしか、「○○大卒」と履歴書に書ければいいや、という気持ちにすり替わっても無理はないかもしれません。

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日本の大学進学率と2040年の日本の総人口
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※図版1枚目/『2040年の未来予測』P221より「日本の大学進学率は平均より下」、図版2枚目/『2040年の未来予測』P64より、「日本の総人口」