近年、社会のIT化が急速に進んだことで、途上国でも容易に経済成長できるようになり、各国の生活水準が急激に上がってきました。生活水準が上がると肉を食べる人が増えるというのは万国共通の現象であり、このままでは近い将来、食肉が不足するのは確実といわれています(日本も戦後、豊かになってから急激に食生活が欧米化してきたという経緯を考えると、うなずける話だと思います)。


食肉を増産するためには、エサとなる穀物も増産する必要がありますが、地球上にはもはや、穀類の生産を大きく拡大できるような農地は残っていません。肉は増産したくても出来ないのです。

加えて、牛から出るげっぷの中には、温室効果ガスが大量に含まれており、地球温暖化の原因になっています。畜産による温室効果ガスの排出を止めないと、温室効果ガスの排出をゼロにするという目標も達成できなくなります。つまり肉を食べるために牛を飼育し、牛の飼育のために大量の穀物を育てるというやり方は、もはや持続不可能な仕組みとなりつつあるのです。

このまま何もしなければ、豊かな強国だけが肉を食べ、それ以外の国は、食料の確保に苦労するという事態にもなりかねません。ここで注目を集めているのが人工肉です。

植物から作る人工肉は、大量生産できますから供給の問題を解決できますし、何より安価に作れます。しかも植物は種や育成期間にもよりますが、呼吸で排出する二酸化炭素よりも光合成で吸収する二酸化炭素の方が多く、脱炭素にも貢献します。

すでに米国のファストフード店では人工肉を使ったバーガーなどが販売されており、14億という巨大な人口を抱える中国も人口肉へ関心を高めています。あまり味にこだわらない商品や、価格優先の商品については、かなりの部分が人口肉に置き換わる可能性があると考えてよいでしょう。

オランダのスーパーマーケットに並ぶ、植物由来の代替肉メーカー「ビヨンド・ミート」の商品。写真:中尾由里子/アフロ

しかしながら、いくら味が似ていても植物ですから、本物の肉にはかなわないという見方もあると思います。そこで最近、特に注目を集めているのが培養肉です。

 

培養肉は、牛や豚などの家畜から採取した細胞を工場内で培養して作った食品です。こちらは本物の肉ですから、味は食物由来の人口肉よりもよいと考えられます。しかしながら、工場で大量に培養する場合、多くのエネルギーが必要となるため、本当に地球環境に優しいのかについては結論が出ていません。また、肉そのものとはいえ、工場で培養された肉については抵抗感を持つ人が一定数出てくることも考えられます。

私たちは、毎日、当たり前のように肉を食べているわけですが、これは豊かな先進国だけの特権であり、途上国との経済格差が大前提でした。途上国が豊かになると継続できなくなる仕組みですから、世界で分かち合うしか解決方法はありません。


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