「在宅ひとり死」に、お金はいくら必要か?

 

在宅ひとり死を唱えると、ただちに費用が天井知らずになる、と怖れる人たちがいます。この人たちは、終末期を迎えた高齢者には24時間誰かがはりついていなければならないと固く思いこんでいるようです。たとえ終末期でも、病院や施設で誰かが傍に24時間はりついているなんてことはありません。何時間かおきに巡回に来るだけです。それなら定期巡回の訪問介護を受けるのと同じ。病院ならそのあいだ、モニターにつながれて体調の変化をチェックしてくれますが、アラームが鳴れば看護師が駆けつけるだけ。

 

ヘルパー指名制で有名なグレースケア機構の代表、柳本文貴さんに、これまでの在宅看取りの事例のうちで、自費負担がもっとも高額だった例を教えてもらいました。最高額で月額160万円だったそうです。

びっくりなさるでしょうか? わたしは逆にほっとしました。なぜなら一日は24時間、1カ月は30日、逆立ちしてもこれ以上は使いようがないからです。柳本さんに重ねて訊ねました。「それはどのくらいの期間、続きましたか?」と。約2カ月半、およそ400万円です。終末期は永遠には続きません。かならず終わりが来ます。この程度の額なら、日本の小金持ちのお年寄りは蓄えを持っているのではないでしょうか。

日本在宅ホスピス協会会長の小笠原文雄さんによれば、在宅ひとり死の費用は30万から300万まで。この程度の費用を用意しておけば家で死ねる、そうです。そればかりか、独居で相続人のいない高齢者が死後にかなりの額の資産を遺していると知りました。相続人がいなければ遺産は全額国庫に没収されます。そのくらいなら、生きているあいだに生き金として使っておけばよかったのに、と思わずにいられません。