3人の中から自分のお母さんを選ぶとしたら


菅野:うちにも男の子がいるんですが、留美子と同じで私もずーっと怒ってます。このGWもずっと一緒だったから、最終日は「今日でやっと終わる……」と思いました。男の子って本当にわからないんですよ。マジメにやるべき時に照れてふざけて、かと思えば「楽しんで!」っていう時に尻込みしたり。最終手段で「いいかげんにしなさい!」と叱ると、その声で初めて「あ、ママが僕のこと呼んでる」って気づくような感じで。どうすれば心に私の言葉が届くのか、ずっと考えてます。ママ友からは「同じことを2000回言えば伝わる」って言われましたけど(泣)。

菅野美穂・高畑充希・尾野真千子が演じる、発狂しそうなワンオペ母たちのリアル_img7

やんちゃざかりの兄弟に振り回される留美子。(C)2021「明日の食卓」製作委員会

高畑:私の親は「好きに生きていいけど、失敗も成功も自分のせい」みたいな考え方で。そういうのが「理想の親」なのかなって思うんですが、自分はそうはできない気がします。いろいろ怒っちゃうだろうし、気にするし、煩くなっちゃうかもな、って。

菅野:怒るのはゆくゆく困ると思うから。愛情から「今、教えておかないと」と思ってやっているんだけど、子供にしてみれば、後でもいいことなんだろうなと思うんです。

尾野:私はよく、うちの姉の子育てを見ていると、「ここ叱るところやろ!」ってところで、ぜんぜん叱らなかったりしてイライラするんですよ。全然ズレてる。たぶん世間一般の多くの人は私と同じ感覚を覚えると思うんです。でもうちの姉は、その子の怒り方を知ってるんですよね。タイミングとか言い方とか……。私は「アホ」で怒るけど、お母さんの姉は「ボケ」で怒るとか。世間が言う「正しいお母さん」である必要は、必ずしもないんだと思うんですよね。

菅野:子供を産んだら「お母さん」と思ってるところがあるのかもしれない。子供からすると、アメくれて、テレビ好きなだけ見せてくれれば「お母さん、超最高!」ってなるんだろうけど、実際になってみるとやっぱり子供を叱ることは必要だと思うし……。でもそんなに叱らなくてもいいのかな。淡々と言い続けて、子ども自身が気づくタイミングを待てばいいのかもしれない。

尾野:あすみの思いも、今は息子に伝わらなくても、何年かたったら「お母さんは僕を思ってくれてた」と思ってくれるかも。どんなお母さんでも、その家なりの「いいお母さん」になってることもあるかもしれない。

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(C)2021「明日の食卓」製作委員会

高畑:でももし3人の中から自分の母親を選ぶなら、あすみさんは……危ない気がする(笑)。

尾野:やっぱそうですよね(笑)。留美子と加奈のどっちだろ。

菅野:加奈さんじゃない?やっぱり、一生懸命だし。

高畑:でも留美子さんの家庭も、愛はありますよね。

菅野:でもずっと怒ってるんだよ……そうだ、足して2で割るっていうのは?

高畑:それで!

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菅野美穂
1977年生まれ。1993年ドラマ「ツインズ教師」(テレビ朝日)の生徒役で女優デビュー。1995年にはNHK連続テレビ小説「走らんか!」の準主役に抜擢、その後ドラマ「イグアナの娘」、「愛をください」、「愛し君へ」、「曲げられない女」、「結婚しない」、「べっぴんさん」、「砂の塔~知りすぎた隣人~」、「監獄のお姫さま」、「ウチの娘は、彼氏ができない‼︎」などに出演。映画では『大失恋。』(95/大森一樹監督)で映画初出演し、『Dolls(ドールズ)』(02/北野武監督)、『さくらん』(07/蜷川実花監督)、『奇跡のリンゴ』(13/中村義洋監督)などに出演。

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高畑充希 
1991年生まれ。2005年、『山口百恵トリビュートミュージカル プレイバック part2 ~屋上の天使』の出演者オーディションでグランプリを獲得、同舞台でデビューを飾る。以降、舞台から映像まで幅広い作品で活躍。2007年から2012年まで舞台『ピーターパン』でピーターパン役を務めた。2013年NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」に出演、同「とと姉ちゃん」ではヒロインを務めた。『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(20/前田哲監督)にて第43回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。2021年はドラマ「にじいろカルテ」の主演を務め、3月からはミュージカル『ウェイトレス』にて主演を務め、第46回菊田一夫演劇賞を受賞。近作に映画『キャラクター』(6/11公開)、映画『浜の朝日の噓つきどもと』(8/27福島県先行公開、9/11全国公開)が控えている。

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尾野真千子
1981年生まれ。1997年の映画『萌の朱雀』(河瀨直美監督)で主演デビュー。2007年、主演映画『殯の森』(河瀨直美監督)で、第60回カンヌ国際映画祭コンペティション部門でグランプリを獲得。2009年、ヒロインを演じた広島発地域ドラマ「火の魚」(NHK広島)が、イタリア賞(最優秀賞)や文化庁芸術祭大賞をはじめ国内外で高く評価される。NHK連続テレビ小説「カーネーション」(NHK大阪)では、東京ドラマアウォード2012主演女優賞など数々の個人賞を受賞。その他映画では『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(廣木隆一監督)で、第30回日刊スポーツ映画大賞助演女優賞、第41回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。主演映画『茜色に焼かれる』(21/石井裕也監督)が公開中。

<映画紹介>
『明日の食卓』
5月28日(金)全国公開
WOWOWオンデマンド、auスマートパスプレミアム、TELASAにて、6月11日(金)より配信開始

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(C)2021「明日の食卓」製作委員会

石橋ユウ、10歳。
同じ名前の息子を持つ3人の母親たち。
だがある日、ひとりの「ユウ」君が母親に殺されたーー。

それぞれが息子の「ユウ」を育てながら忙しく幸せな日々を送っていた。しかし、些細なことがきっかけで徐々にその生活が崩れていく。苦労はあっても、息子への愛に偽りはなかったはずなのに、どこで歯車が狂ってしまったのか。「ユウ」の命を奪った犯人は誰なのか、そして三つの石橋家がたどり着く運命とは……?

監督:瀬々敬久
原作:椰月美智子『明日の食卓』(角川文庫刊)
脚本:小川智子
主題歌:「Motherland」tokyo blue weeps
 
菅野美穂 高畑充希 尾野真千子
柴崎楓雅  外川燎  阿久津慶人 / 和田聰宏  大東駿介  山口紗弥加  山田真歩  水崎綾女  藤原季節
真行寺君枝 / 渡辺真起子  菅田俊  烏丸せつこ
 
製作幹事:WOWOW 制作プロダクション:トラヴィス 配給:KADOKAWA/WOWOW 
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/ashitanoshokutaku/
(C)2021「明日の食卓」製作委員会

 


<着用アイテム>
■菅野美穂さん
ネックレス¥2200000、ブレスレット¥792000、イヤリング¥2035000/ミキモト
■高畑充希さん
ワンピース¥73000/VIVIANO(VIVIANO)
シューズ¥32000/lostinecho(VIVIANO)
ピアス¥63000、リング¥67000/全てCHARLOTTE CHESNAIS(EDSTRÖM OFFICE)
■尾野真千子さん
ピアス/talkative(トーカティブ)

<衣装お問い合わせ先>
問い合わせ先:
ミキモト カスタマーズ・サービスセンター tel. 0120-868254
EDSTRÖM OFFICE tel. 03-6427-5901
VIVIANO tel. 03-6325-6761

撮影/塚田亮平
ヘア&メイク/北 一騎(Permanent/菅野美穂さん)、
Shohei Kashima(W/高畑充希さん)、
黒田啓蔵(Iris/尾野真千子さん)
スタイリング/青木千加子(菅野美穂さん)、
根本亜沙美(高畑充希さん)、
伊藤真弓(BRÜCKE/尾野真千子さん)
取材・文/渥美志保
構成/川端里恵(編集部)