「娘がいたら必ず通わせていた」“かかりつけ婦人科医”の重要性


また小島さんは、女性は10代・20代から婦人科の「かかりつけ医」を探すことを勧めています。

「自分の身体のことって、教科書で読んでいるだけで意外と知らないことが多いと思います。私自身、それを自覚したのは妊娠を考えたとき、人生で初めて婦人科へ行ったときです。そこで診察時に生まれて初めて身体の中を超音波で見て、衝撃を受けました」

教科書などで見る子宮は、空っぽの風船のようなもの。しかし実際に超音波で子宮の断面を見ると、それは中華料理の花巻のように見えたそう。卵巣や卵子も平面の絵と実物は異なり、イメージが覆ったと言います。

「例えば妊孕率に関しても、自分自身の状態を把握しておらず、妊娠の機会や不妊治療が間に合わなかった女性もたくさんいます」

 

「10代女子が低用量ピルを飲む習慣がある国なら、定期的に婦人科へ行く習慣もありますけど、日本はそうではありません。私はミレーナのチェックも兼ねて年に一度は婦人科で子宮頸がん検査もしますが、本来は10代20代からかかりつけの婦人科があるといいですよね。もし娘がいたら、信用できるお医者さんに必ず通わせたと思います」

婦人科に通うことは健康面の管理ができると同時に、教育の場にもなると小島さんは考えているそう。

「婦人科へ行けば、PMSや生理痛の仕組みも先生が教えてくれます。また、思春期に親には相談しにくい症状もありますから。例えばカンジダ膣炎。実は私もまだ性的な経験のない高校生の頃に症状が出たことがあります。カンジダの菌はもともと身体の中に住んでいますが、ストレスや疲れで免疫が落ちたりすると菌が増えて痒くなったり白いおりものが出ますよね。幸い当時は自然に治りましたが、とても怖かったし、不快な記憶として残っています」

小島さんがこれをカンジダ膣炎と認識したのは、社会人になりストレスで同じ症状が出たとき。婦人科で診断され、ようやく高校時代の記憶と合致したのだそう。

「カンジダだけでなく、いろいろな不調や病気がありますし、一人で悩んで検索して、間違った情報を信じてしまうこともありますからね……」

思春期は特に、家庭以外に少しでも気軽に性について相談できる場所が重要です。

 


「生理」を理解することは、人間・命への敬意、そして人権の尊重


最後に小島さんから、この記事の読者の方にぜひ観てほしいとオススメの映画を教えていただきました。

『パッドマン 5億人の女性を救った男』という、事実に基づいたインド映画の名作です。愛情あふれる感動作なので、ぜひ多くの方に観ていただきたいです」

インドは男尊女卑の価値観が強く、生理に対する偏見のある国。特に田舎では、女性は生理期間に家の外の小屋に籠もって家族と別に暮らします。

「生理=穢れ」とされ、さらに貧しさゆえに生理用品も乏しい。不衛生な環境で病気になり、命を落とす女性さえいるという状況下、主人公の男性はそんな妻のために生理用ナプキンを作るというストーリーです。

『パッドマン 5億人の女性を救った男』発売中 DVD 4180円(税込) 発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント © 2018 CAPE OF GOOD FILMS LLP. All Rights Reserved.

「主人公の男性は街で変態扱いされ、家族や妻からも見放されてしまいますが、使命感を持って安価で衛生的な生理用ナプキンの開発に心血を注ぎます。インド映画なのでコミカルな面もあり面白いです」

結果的に、彼はナプキンの製造に成功しただけでなく、この製造法をインド各地に広め、さらには女性の雇用支援・経済的自立を促し、5億人の女性を救ったのです。彼は国連に呼ばれてスピーチするほど、注目を集めました。

「主人公はもともと妻のためにナプキンを作り始めたが、彼の偉大さはそこではありません。もちろん愛妻家であるのは素晴らしいことですけどね。

では彼がなぜ国連でスピーチまでするほど世界からリスペクトされたかというと、彼は女性を一人の人間として捉え、生理を人間が健康に生きていくために解決すべき課題として考えたからです」

そこには人間に対する敬意、命に対する敬意、ひいては人権を尊重する気持ちがあると小島さんは言います。

『パッドマン 5億人の女性を救った男』発売中 DVD 4180円(税込) 発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント © 2018 CAPE OF GOOD FILMS LLP. All Rights Reserved.

「つまり、息子さんやパートナーに生理を理解してもらうときは、お母さんや恋人に優しい男になろうねと言うのではなく、これは人権の問題であり、命に対するリスペクトなんだよ、とぜひ伝えて欲しいです」

人権の問題、命に対するリスペクト。

この視点で「生理」を理解してもらうのは、たしかに非常に重要だと思いました。

日本においての生理用品の軽減税率問題に関しても、トイレへ行けばトイレットペーパーを使うのと同じように、女性にとって月一回必要なものだと理解さえすれば、当然ながら対象になるのが分かるはず。

こうした考え方がきちんと多くの人に広まり、「生理」がフェアに扱われる世の中になることを祈ります。
 

写真/鈴木愛子
取材・文/山本理沙

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