ハラスメントを抑えるには、求めすぎないことが肝心

 

さまざまなハラスメントを取材してきた奥田さんは、本書において“無自覚ハラスメント”を起こさない良好な関係を築くための方策を三つ提案しています。

 

「まず一つ目は、価値観の違いを受け入れ、なぜそう考えるのかを相手の立場になって理解しようと努めること。異なる考え方、文化を持った者同士のコミュニケーションには、相当の努力と工夫が必要であることを心得ておく必要がある。次に二つ目として、相手から高く評価されたいという承認欲求の水準を下げるとともに、自己効力感を高めること。他者評価に固執すると、アイデンティティを失い兼ねない。自分のものさしで自己評価し、自分を受け入れる。つまり自己承認しつつ、少しずつでも自信をつけていくことで、承認欲求が満たされないという苦しみから解放されるのではないだろうか」

対象が他人であれ自分であれ尊重する姿勢が大事なようです。しかし、最後の一つはどうやら方向性が異なる模様。しかし、“無自覚ハラスメント”を抑制する上でとても重要なことだと奥田さんは訴えます。

「そして最後に三つ目として、相手に対して求める役割期待の度合いを低く見直すこと。すなわち、相手に多くのことを求め過ぎないことである。相手の考えや気持ち、さらには相互関係の現状把握を度外視して、ただ相手はこうあるべきという己の価値観や理想を押しつけたうえに、自身を上司、夫として高く評価することを求める。そして、相手から思うような反応が得られないと、ますますエスカレートしていき、“無自覚ハラスメント”に及んでしまう。そんな悪循環に陥っているケースが少なくないのである」