人からどう見られてるかに執着してしまう


長濱:ひとつ聞きたいことがあるんですが。

本谷:ひとつじゃなくて、撮影の時からいくつも聞かれてるよ(笑)。

 

長濱:本谷さんは「人」が好きですか?

本谷:好きじゃなかったはず。昔は集団行動はできないし、 誰とも目を合わせない、挙動不審な人物と認知されてたし。でも今は特にそんなこともないから、自分に中で何かが変わったんだろうなと思います。

長濱:自分は人が嫌いなのかなって思うことがあるのですが、なのに人に執着してしまうんです。SNS やネットを通じて「自分が人からどう見られるか?」を意識するのが当然の世界で生きてきちゃったからだと思うんですが。

本谷:番組に入ってきた当初、ねるちゃんは戸惑ってる感じで、だけど殻を破りたがってる印象だった。それこそ「人からどう見られているか」を意識しながら生きてきたんだろうなって。いろいろ考えてるけれど、自分のことはあんまりわかっていない子っていう(笑)。どう生きたらいいか、今まさに人生の岐路に立っているいるんでしょうね。

長濱:「セブンルール」は大好きな番組だったし、そこに入るのがすごく怖かったんです。私は番組のカラーにも合わないし、視聴者の方に拒絶されそうな気がして。でも本谷さんは「私の発言が嫌だったら言ってね」ってLINEを下さったり、なんて優しい方なんだろうって思いました。

本谷:人の気持ちが分からずに、たくさん過ちを犯してきたので(笑)。愛情で言ったことが、相手にとっては本当に不愉快だったりするんですよね。でも私も緊張してましたよ。人気のアイドルで、私の発言にファンが「俺のねるになんてことを!」みたいなことになったらどうしよう、って。でもだんだんねるちゃんが「むしろいじって下さい」の人なんだとわかったし、そのほうがねるちゃんの面白いところがでるなと思ったよ。


本谷有希子さんと長濱ねるさんの対談は後編(10月22日公開予定)に続きます!
 

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本谷有希子(Yukiko Motoya)
1979年、石川県生まれ。2000年「劇団、本谷有希子」を旗揚げし、主宰として作・演出を手がける。主な戯曲に『遭難、』(第10回鶴屋南北戯曲賞)、『乱暴と待機』、『幸せ最高ありがとうマジで!』(第53回岸田國士戯曲賞)などがある。主な小説に『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』、『生きてるだけで、愛。』、『ぬるい毒』(第33回野間文芸新人賞)、『嵐のピクニック』(第7回大江健三郎賞)、『自分を好きになる方法』(第27回三島由紀夫賞)、『異類婚姻譚』(第154回芥川龍之介賞)、『静かに、ねぇ、静かに』など。近年、著作が海外でもさかんに翻訳され、『異類婚姻譚』『嵐のピクニック』を始め、世界9言語で出版されている。英語版は The New Yorker、The New York Timesなどで大きな話題となった。

 

長濱ねる(Neru Nagahama)
1998年9月4日長崎県長崎市生まれ。3歳から7歳まで長崎県五島列島で育つ。2015年「欅坂46」のメンバーとしてデビュー。2019年7月にグループを卒業。現在は、書籍情報誌でエッセイ連載や、TV番組「セブンルール」「legato~旅する音楽スタジオ~」のMC、ラジオJ-WAVEにてナビゲーターを務めるなど多方面に活躍中。趣味は読書。

(長濱さん着用衣装)
シャツワンピース¥43000/キディル(サカス ピーアール) レザーパンツ¥20000/ハチイチブランカ(ウトス ピーアール) ネックレス¥13000/フォークバイエヌ(ウトス ピーアール) イヤーカフ¥18000/ルフェール(ウトス ピーアール)

<新刊紹介>
『あなたにオススメの』
本谷有希子(講談社) ¥1870

気づけば隣にディストピアーー
世界が注目する芥川賞作家・本谷有希子が描く、心底リアルな近未来!

「推子のデフォルト」
子供達を<等質>に教育する人気保育園に娘を通わせる推子は、身体に超小型電子機器をいくつも埋め込み、複数のコンテンツを同時に貪ることに至福を感じている。そんな価値観を拒絶し、オフライン志向にこだわるママ友・GJが子育てに悩む姿は、推子にとっては最高のエンターテインメントでもあった。

「マイイベント」
大規模な台風が迫り河川の氾濫が警戒される中、防災用品の点検に余念がない渇幸はわくわくが止まらない。マンションの最上階を手に入れ、妻のセンスで整えた「安全」な部屋から下界を眺め、“我が家は上級”と悦に入るのだった。ところが、一階に住むド厚かましい家族が避難してくることとなり、夫婦の完璧な日常は暗転する。


撮影/目黒智子
 ヘア&メイク/橋本庸子(本谷さん)、風間裕子(長濱さん) 
スタイリング/橋本庸子(本谷さん)、市野沢祐大(TEN10・長濱さん)
取材・文/渥美志保
構成/川端里恵