若い頃は楽しめなかった、40代ならではのファッション


スー:写真の撮り方とか、体や服のどこを見るべきかとか、大草さんのドリルがあったらいいのに(笑)。

大草さんのかっこいいところって、“少しも無理していない”ように見えるところ。40代って、少し頑張って着ている感じが目立っちゃう年齢です。でも大草さんは一個もそういう部分がない。しかも若い子には絶対できない着方で、「ライダースって40代が着るのが一番かっこいいなあ」とか思わせてくれるから、つい見ちゃいます。

大草:そう言っていただけて本当に嬉しいです。“おしゃれ”と言われるより“自分らしい”と言ってもらえることが一番嬉しいので。

――確かに、若い頃は着こなせなかったけど今だからこそ似合うファッションが自分でわかれば、毎日すごく楽しくなりそうです。どうしたら見つけられるでしょうか。

大草:ディテールから攻めるのではなく、まずは、40代や50代の“素敵な女性像”を持つこと。実在の人物でいいし、外国人でもいいです。

スー:今はいい時代になったので、インスタなどのSNSのおかげで、自分にとってピンとくる人を見つけやすくなりましたよね。年齢や国籍、体型とかもものすごいバリエーションがあるし、みんなで画一的に同じものを目指さなくてもよくなったから、それがこの時代のよいところだと思います。

大草:インスタがここまで普及したことで、みんなおしゃれになったというのは心から感じます。雑誌だと1ヶ月に1回だけど、インスタは毎日見ることができるから。とにかく見ることが大事ですね。

 


50代をどう過ごす?


――最後に、50代の過ごし方についてはどう考えていますか? 40代は忙しすぎたからワークライフバランスを考えたいという話も前回出ていました。

スー:そう、このままだと仕事に殺される! っていう感じで、よくないんですよね。かといって仕事の量を半分にして鎌倉とかに隠居したらいいのか? っていうと、それも違うし。

でもこの先の10年、今と同じ生き方をしていたらたぶん60歳で後悔することになるし、どうしようかと思っています。もしかしたら今、50歳手前にして人生で一番の勝負がきているのかも。

大草:そうなんですよね。だから私、50歳目前にしてドキドキしています。40歳は、20代や30代の貯金でなんとかなったけど、50代はそうはいかなそうだから、またやり直さないといけない気がします。

スー:40代は蹴伸びでやってこれたけど、50代からは通用しないですよね。仕事の仕方も、プライオリティのつけ方も、今は判断ができないけれどこれから考えなくちゃって思います。

大草:私が今なんとなくぼんやり描いているのは、今まで休んだことがほとんどなかったので、一回長期の休みを取りたいなっていうこと。1年とか。自分を見つめ直す時間も必要です。仕事が増えるのはいいけど、その分疲弊もしていくので“これだけあれば自分らしい生活が歩める”みたいなことは一度考えてみたいです。

スー:それこそジャストフィットの更新ですよね。50代のジャストフィット。

大草:本当にそうですね(笑)。

――年齢を重ねることに対して後ろ向きな気持ちを抱いている女性も多い中、お二人が何度も口にしたのは「自分らしさ」という単語。

私たちは「こうあるべき」という世間一般が抱く概念に囚われがちですが、40代ですべきことは、とにかく自分らしさを追求すること、という言葉が胸に刺さりました。

若い頃にはなかった40代だからこその楽しみを見つけることも、年齢を重ねることの醍醐味なのかもしれません。
 

取材・文/小澤サチエ
撮影/大坪尚人
構成/山本理沙

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